日テレ「news every.」奈良公園シカ報道にやらせ疑惑 分断を煽る過剰演出か

日本テレビの報道番組「news every.」が9月29日に放送した奈良公園特集を巡り、やらせ疑惑がSNS上で拡散している。番組では、ガイドを名乗る女性が「10年以上案内をしてきた」「鹿への暴行は見たことがない」と証言し、外国人観光客による鹿への暴行問題を取り上げた。
しかし放送後、このガイド女性の実在性を疑う声がSNSで相次いだ。奈良のガイド団体や観光関係者からも「該当者を確認できない」との声が上がり、さらに番組内で登場した飲食店歴25年との男性オーナーについても「実在が確認できない」「店の所在が不明」との情報が広まり、番組全体の信憑性に疑問が投げかけられている。
また、放送内容が掲載される番組公式動画「日テレNEWS」からはガイドと飲食店オーナーのインタビュー部分が削除・編集された。
奈良公園は、東大寺や春日大社、興福寺を含む「古都奈良の文化財」として世界遺産に登録された歴史的景観の中心地。国の天然記念物に指定される鹿は観光の象徴として国内外の旅行者に親しまれてきたが、この1年位の間、外国語を話す旅行者による鹿への暴行動画がSNSで拡散していた。
これを受け、最近になって、一部の政治関係者やジャーナリストの間では「行為をしたのは外国人か日本人か」をめぐる論争が生じていた。その流れを汲み、日本テレビが現地取材を行ったことが、今回のやらせ疑惑の発端となっている。
「よい旅ニュース通信」では既に約1年前、奈良市と奈良県警に対し、外国人による鹿への暴行の有無を確認していた。いずれも「そうした事例はある」と認めつつ、その背景については「最近の訪日客増加によって新たに生じたものではなく、数十年前から外国人・日本人を問わず存在していた」との認識で一致していた。
今回の騒動を受けて改めて奈良市観光課に聞いたところ、職員は「地元出身だが、自分自身で暴行を見たことはない。ただし存在は知っている。今回の騒動を前向きに捉えれば、結果的に鹿への暴行そのものがなくなれば望ましい」と話している。
日本テレビは現時点でやらせ疑惑について公式な説明をしていない。テレビの現地取材では、事前にシナリオを想定しつつ、現場で「撮りたい絵」が得られない場合、演出を加えるかどうかは、ディレクターの判断に委ねられる。「必ず撮らなければならない絵」がある場合、その実現のために事前の準備や段取りが行われることもある。
今回のやらせ疑惑はあくまで結果にすぎず、より本質的には、鹿への暴行そのものを「有り・無し」という二項対立に単純化するSNS世論の風潮に対し、番組側が意図的に分断をあおり、炎上を狙ったかのような取材テーマ自体に疑問が残る。(編集部)