JR東日本企画、指名停止広がる可能性 国事業で約20億円の人件費 過大請求

会計検査院は2025年11月5日、「令和6年度決算検査報告」を内閣に提出し、広告大手・ジェイアール東日本企画(東京都渋谷区)が、2019〜2023年度に資源エネルギー庁などの国の委託・補助事業で人件費を過大請求し、約20億円の不正受給があったと指摘した。
JR東日本企画は、JR東日本グループのハウスエージェンシーで、2024年度の売上高は1,149億円と業界第5位に位置する。2021年度の794億円から大きく業績を伸ばしている。
同社は2025年5月30日に外部調査委員会の報告を公表し、中央省庁向け83事業で実態と異なる作業時間の計上があったと認め、会計検査院の報告に合わせ、11月5日には再発防止策を追加公表した。
| JR東日本企画発表「中央省庁等向けの委託事業及び補助事業に関する不正な人件費の請求について」 |
近年、公共事業の過大請求は、広告会社や旅行会社が事務局業務を受託する案件で繰り返し問題化している。多くは「関与人数 × 1人当たりのフィー」を積み上げる人件費の算定・請求過程に水増しが行われている。
発注側の公共団体では、事業稼働中の検査が十分に行われず、年度末に提出される実績報告書および請求書の段階で初めて不整合が判明するケースが少なくない。結果として、受託事業者の規模や実績、コンプライアンス方針や申告内容を前提に審査が進みがちな構造的課題がある。
コロナ禍には、旅行大手・近畿日本ツーリストのコロナワクチン関連事業の人件費で最大16億円の過大請求(後に最大9億円へ修正)が発覚。特に金額が大きかった事案では、元支店長ら3名に懲役3年・執行猶予5年の有罪判決が言い渡されている。
今後の焦点:地方自治体に「指名停止」広がる可能性
JR東日本企画は東日本エリアに15拠点を設け、国の事業よりも、鉄道網や駅スペース活用を強みに自治体案件(観光・地方創生事業の事務局運営、プロモーションなど)で実績を持つ。
公共調達では、不正受給や独禁法違反が判明した企業に対し、各省庁・自治体が要綱に基づき入札参加資格(指名)を数か月〜約1年停止するのが通例となる。全国一律ではなく、団体ごとに個別判断・個別公表される点がポイントだ。
たとえば、過大請求額がJR東日本企画の20億円を大きく下回る、近畿日本ツーリストの9億円の事案では、自治体レベルで最長1年程度の停止例が確認されている。
既に経産業省が2025年6月から18か月、厚労省が9月から9か月、文科省が10月から9か月、内閣府が11月から10か月の指名停止処分を公表している。いずれも、各省が主管する事業において不正が発覚したことを受けた措置である。
こうした流れや今回の指摘を受け、入札参加登録を行っている東日本エリアの都道府県・市町村でも、重大な事項と判断した自治体が相次ぐ可能性がある。
新たなパーパスウォシュの事例に
JR東日本企画の公式サイトでは、自社のパーパスとして「誠実こそ、武器。誠実は私たちの最大の武器。実直に、偽りなく、自他のために学び、考え続けることが私たちの誠実です。」と掲げている。
しかし今回の問題発覚により、その理念とは行動が伴わない「パーパス・ウォッシュ」の事例の一つに加わった。