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大手旅行会社の年頭所感、不祥事反省と能登への言及? KNT-CTと他社との意識差が顕著

2024年は2023年に続き、コロナ禍からの回復過程で旅行会社における公共事業の不祥事が発覚したり、「バスツアー死亡事故」が発生し旅行管理の安全が脅かされたりしました。そこで、2025年の大手旅行会社の年頭所感では、不祥事に関与した各社のリーダーが反省や再発防止を誓うのでしょうか?能登半島への言及を含めて、各社の年頭所感を調査しました。

大手旅行会社のロゴ
【2024年の大手旅行会社の不祥事】
・2024.06.17.公取砲の威力、全国自治体で旅行大手4社の指名停止が広がる()
・2024.06.21.青森市、コロナ談合で近ツーを9カ月指名停止()
・2024.10.26.JTB主催「マレーシアツアー」、バス事故で日本人1名死亡()
・2024.11.26.HIS子会社で雇用調整助成金の不正受給発覚か()
・2024.12.10.クラツー主催ツアー、積雪の狭路で観光バス横転2人骨折()

JTB(代表取締役 社長執行役員 山北 栄二郎)

JTBの年頭所感では、文末近くに「コンプライアンスの遵守」という言葉が登場しています。しかし、これまでの独占禁止法違反による排除処置命令や、マレーシアで発生したバス事故への具体的な言及は一切ありませんでした。また、能登半島に関する内容も触れられていません。

 

所感全体はサステナブルツーリズムの国際認証機関への登録を自己評価の材料とし、主にイベントやインバウンドなど営業的な話題が中心でした。しかし、旅行業界リーディングカンパニーであり、日本旅行業協会の会長職を担う企業としての立場より、業界が関与した諸問題に対する具体的な反省や解題解決への意欲が十分に表明されず、形式的な表現に留まった印象です。(年頭所感

HIS(代表取締役社長 矢田素史)

HISの年頭所感は公式サイトでは公表されておらず、一部業界メディアを通じて発表されています。内容には、GoToトラベル事業における不正受給の発覚後、新たに明らかになった雇用調整助成金の過大請求問題に関する言及はありませんでした。

 

HISの経営陣は子会社の不祥事について「子会社の問題」として捉える姿勢が見られ、不祥事への対応策が不透明であるため、上場企業の社会責任意識が問われます。能登半島についての言及も見られませんでした。(年頭所感/業界メディア

KNT-CTホールディングス(代表取締役社長 小山佳延)

近畿日本ツーリストおよびクラブツーリズムを抱えるKNT-CTホールディングスの年頭所感は、簡潔で要点を押さえた内容でした。冒頭で能登半島について復興への祈念を伝えた後、過去のコロナ禍における過大請求問題やトルコバスツアー事故(クラブツーリズム)に言及し、不祥事の再発防止に向けた取り組みを明示しています。

 

形式的になりがちな営業的な見通しへの言及は抑えられ、具体的な問題に触れた点で、透明性と責任を感じさせる所感となっています。(年頭所感

日本旅行(代表取締役社長 小谷野悦光)

日本旅行は、冒頭で能登半島について明確に言及しています。同社親会社は北陸新幹線を運行するJR西日本であり、この地域への観光誘致を重要なテーマとして取り上げ、地方創生に向けた取り組みを積極的に進める姿勢を見せています。

 

一方、グループの日本旅行東北が関与した独占禁止法違反による排除処置命令は触れず、営業的見通しが主体の構成で、コンプライアンスへの姿勢はやや曖昧です。(年頭所感/業界メディア

名鉄観光サービス(代表取締役社長 岩切道郎)

名鉄観光サービスも公式サイトでは年頭所感を公表しておらず、業界紙2紙に掲載されています。同業界紙ではウェブサイトで公表が行われておらず、業界紙の定期購読者以外は閲覧が難しく、一般旅行者が同社の現状や今後の方向性を把握するのは困難です。

東武トップツアーズ(代表取締役 社長執行役員 百木田康二)

「東武トップツアーズとしては年頭所感を公表していない」(同社広報担当者)とのことで、詳細な内容は不明です。

総括

2025年の年頭所感を通じて、各社の対応には差が見られました。特に、KNT-CTホールディングスは具体的な問題に触れており、透明性を高める姿勢が評価できます。

 

一方、JTBとHIS、日本旅行は自己PRと形式的な内容に終始しており、過去の不祥事に対する真摯な反省が感じられません。不祥事を起こした企業の社会責任とは、繰り返し声明を発表し、問題の修正プロセスに対するステークホルダーの理解を得る活動であり、問題に触れずに忘れてさせる作業ではありません。

 

なお、能登について言及したのは、近畿日本ツーリストと日本旅行のみでした。

 

今回、特定の業界メディアでのみで年頭所感を公表し、企業公式サイトでは発表しなかった旅行会社が複数存在していました。この点について、上場企業やそのグループ、公共事業を受託している企業の社会責任として、一般旅行者層に対する広報姿勢のあり方が問われます。

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