よい旅ニュース通信  ~日本のすみずみを旅先に。~

menu
  • Instagram
  • Twitter
  • Facebook

山梨県が富士山登山鉄道構想の調査結果を発表-経済効果1.56兆円と雇用12万人創出-設備投資1,486億円に

 山梨県は2024年9月20日、富士山登山鉄道構想の事業化に関する調査結果を公表しました。調査は、令和5年度の国土交通省の補助金を活用し、委託業者のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーが担当していました。(写真提供:山梨県)

富士山登山鉄道

 今日、報道関係者に提供されたのは、デロイト社が作成した129ページのパワーポイント形式の全文報告書です。内容が複雑で分かりづらい部分があり、その補足として、要点された2ページの報告書概要版が併せて提供されました。

 

富士山登山鉄道構想の調査結果
報告書概要版1ページ目

 調査結果によると、鉄道の敷設・運営に関して検討された4つの方式の中で、最も有力な運営スキームとして「上下分離B」方式が挙げられています。この方式では、鉄道の敷設と運営におけるリスクを官民で分担し、年間利用者数を300万人、設備投資額を1,486億円と見込んでいます。また、利用者数が50%減少した場合や設備投資が50%増加するなどのリスクシナリオにおいても、黒字を維持できるとされています。

 

 鉄道と周辺事業を一体で考慮した経済波及効果の試算によると、鉄道と周辺事業を合わせた40年間の累計で約1.56兆円の経済波及効果が見込まれ、延べ12万人の雇用創出が期待されています。

 

富士山登山鉄道構想の調査結果
報告書概要版2ページ目

なお、報告書は今後、山梨県や国土交通省のサイトでの公開が見込まれます。

登山鉄道構想をめぐる山梨県と富士吉田市の意見の溝

 富士登山鉄道構想は山梨県が2021年に、富士山の世界遺産登録抹消の危機を防ぎ、富士山五合目のオーバーツーリズム対策や富士山保全を目指す構想として策定されました。その後、富士登山鉄道構想を巡り、特にコロナ禍が明けた2023年度から、山梨県と反対姿勢を示す富士吉田市との意見対立が進んでいます。

 

 富士山登山鉄道構想で導入が想定されている鉄道は、LRT(ライトレール)と呼ばれる低床車両型の路面電車の一種で、最近では2023年8月に開業した「宇都宮ライトレール」が話題になりました。

 

 これまで、山梨県の長崎知事は、反対意見に対して「LRTありきでない」と説明しつつ、鉄道構想について検討を進めてきました。それに対し、富士吉田市の堀内市長は、環境負荷や地元経済への影響を懸念し、山梨県のやり方は「LRTありき」と構想に強く反対しています。両者はそれぞれの議会や定例会見で意見を述べ合い、立場の違いが鮮明となっていました。

 

 その状況下、地元山梨日日新聞が今年7月1日、富士山五合目の新たな登山規制が施行される日に合わせ、県内27市町村の首長などを対象にアンケートを発表しました。

 

 結果は、市町村首長においては、賛成13市町村、反対1市、どちらとも言えない13市町村の結果でした。富士山近隣の北麓6市町村では、富士吉田市以外の5町村が賛成し、唯一富士吉田市が反対の立場を取っていることが明らかになっています。

2024年7月1日 山梨日日新聞「富士山登山鉄道構想に関するアンケートの回答と理由」

 

関連サイト

山梨県政サイト

関連記事