menu
  • Instagram
  • Twitter
  • Facebook

電通、2026年サッカーW杯の国内放送権を土壇場で取得 電通案件がお茶の間を救う?

電通社屋
電通本社ビル(汐留)

 2026年に北中米で開催されるサッカーW杯の日本国内における放送権について、広告大手の電通は2025年12月4日、総合的なメディアライツを取得したと発表した。
今年3月頃、国際サッカー連盟(FIFA)が電通を外し、博報堂と交渉を進めていたとされていたが協議がまとまらず、大会まで約半年のタイミングで電通が国内放映権を引き受けるかたちとなった。

 大会は2026年6月11日~7月19日にかけて、カナダ、メキシコ、アメリカの3カ国で開催。出場は48チーム、全104試合という過去最大規模で、日本代表を含む試合が日本国内でも視聴できる体制が構築される。

 

 電通は、放送局や動画配信サービス事業者と連携して視聴環境の設計を進め、FIFAから正式に権利を取得した経緯を明らかにした。権利料は公表されていないが、一部メディアでは約350億円規模と報じられている。

 

 放送体制は、日本代表戦についてNHKや民放キー局などによる地上波での生放送をを予定し、全104試合については、動画配信事業者によるライブ配信が行われる。

 

 近年のW杯放送権をめぐっては権利料の高騰が続き、前回カタール大会ではABEMAが全試合を無料配信する一方、NHKや民放各局は権利取得を見送った。2026年大会についても、世界で日本国内の放送権者のみが決まらない状況が続いていた。今回、「空席」の放送権を電通が引き受けたことで、悪い意味として捉えられがちな「電通案件」が日本のお茶の間を救ったかたちとなる。

 

 一方で、FIFAとの交渉窓口を電通が担い、国内の放送局や配信プラットフォームに再販売する構図は、1984年ロサンゼルス・オリンピック以降の五輪やW杯などで築かれてきた「電通モデル」の踏襲とも言える。

 

 電通の大型国際イベントへの関与は、汚職・談合事件で逮捕者を出した東京オリンピックや、運営トラブルの一因として「#電通不在」がネット上で話題となりながらも、数多くの小口案件受託を通じて静かに関与していた大阪・関西万博につづくもの。

博報堂は交渉をまとめ切れず、「挑戦しない姿」を露呈

 今回、サッカー日本代表戦を地上波テレビで観戦できるという意味では、「良い意味での電通案件」が誕生した。一方、FIFAからラブコールを受けていたとされる広告業界2位の博報堂は、交渉をまとめ切れずに撤退したかたちとなり、チャレンジ精神に欠ける経営判断を露呈したとも受け取れる。

赤坂bizタワー
博報堂が入居する赤坂bizタワー

 

 東京オリンピック事件以降、表舞台から身を引き、2025年12月期連結決算で約600億円の赤字を計上しながらも、サッカーW杯の国内放送権に約350億円規模の投資を決断した電通は、博報堂との「格の違い」を改めて印象づけた。