刀、「イマーシブ・フォート東京」26年2月終了 需要がミスマッチ原因、 命運握る「ジャングリア沖縄」集中へ

マーケティング会社「刀」(代表取締役CEO:森岡毅)は2025年12月25日、子会社の刀イマーシブが運営する東京・東京・お台場で運営する体験型施設「イマーシブ・フォート東京」を、2026年2月28日をもって営業を終了すると発表した。
森岡CEOは、終了の理由について、2024年3月の開業当初に想定していた大人数向けの「ライト体験」ではなく、人数限定の「ディープ体験」に需要が集中したことを挙げた。2年目にはディープな体験中心へと転換を図ったものの、同社が想定する最適モデルに対し施設規模が過大となり、早期の撤退を決断するに至った。
森岡氏はあわせて、「財務面を含め当初計画との大きな乖離が生じた事実は、経営者として重く、真摯に受け止めている」とコメントを発表。一方で、撤退判断の前提となる具体的な来場者数や稼働率、損失額など詳細は公表されていない。
なお、同日付の官報に掲載された第9期決算公告(2025年6月期)によると、刀の当期純利益は13億700万円の赤字、累積損失(利益剰余金)は62億3,700万円のマイナスに達していることが明らかになった。
命運握る「ジャングリア沖縄」と公的資金関与

お台場からの撤退を受け、今後の同社の命運は、グループ会社、ジャパンエンターテイメントが2025年7月に開業した「ジャングリア沖縄」の成否に委ねられることになる。
同施設は現在、SNS上などで運営面と施設内容について評価が分かれており、一過性の話題で終わらせないための安定運営と集客が喫緊の課題となっている。
同プロジェクトは、多層的な公的資金が投じられている点が特徴。資金面では、商工中金(那覇支店)が2023年に総額366億円のシンジケートローン(協調融資)を組成。沖縄振興開発金融公庫も、出資に加え、民間金融機関と協調したシンジケートローンを実行するなど、国を挙げた支援体制を敷いている。
さらに、刀本体に対しても官民ファンドのクールジャパン機構が2022年に80億円の出資を決定。インバウンド需要の取り込みを狙う国家戦略的なプロジェクトとして後押ししてきた経緯がある。これに加え、2026年度にジャパンエンターテイメントが名護市で計画している「観光人材育成」には、内閣府の「沖縄振興特定事業推進費補助金」から2,900万円の交付も決定している。
刀とマーケティング
「マーケティングで日本を元気に」を標榜する刀には、森岡氏がかつて在籍した「P&G」や「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」出身のメンバーが顔を揃える。特にP&G出身者は、そのビジネス手法を武器に各界で勢力を広げており、「P&Gマフィア」とも称される。
しかし、これら精鋭集団が主導したお台場での事業は、わずか2年足らずで終了という結末を迎えた。公的資金を含む巨額の資本が投じられた沖縄の地で、今度は成果を上げることができるのか。その能力が改めて試されることになる。