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【ご当地グルメ】青森県中泊町は天からの救世主「メバル」でがっちり!?

11月下旬、都内で開催された東北ブロック記者説明会に参加した際、青森県の担当者がPRしていた、津軽半島中泊町のご当地グルメ、「中泊メバル」に興味を持ちました。メバルと聞くと反応してしまう。釣りをする人には理解してもらえるかと。海釣り界でメバルは大切にされています。

青森県小泊漁港

定量データはありませんが、メバルは一般的に知られている魚でしょう。都内でも目利きの魚店では毎日数匹は売っているし、スーパーでもたびたび見かける。釣り好きの大将の寿司屋ではネタとして出できます。大人なら人生で十数回、少なくとも2-3年に何度か。メバルの煮付を食べているはずです(と勝手な推測で話を進めます)。

 

一方、記者が通う魚屋の営業終了間近、半額シールが貼られていても売れ残るメバルを見ると残念でなりません。メバルに限りませんが、廃棄または辛うじて何かの原料となってゆきます。メバルは名前が知られていても、一般家庭の食卓でメジャーになれない魚のイメージがあります。

 

そのような思いを抱く記者が聞いた「中泊メバル」とは?しかも中泊町はこのメバルで、がっちり?興味が湧いたので、中泊町役場や漁協の関係者に話を聞き、メバルも食べてみました。

 

中泊町のメバルと普通のメバル?

「中泊メバル」は、メバルはメバルでも正式な魚種名は「ウスメバル」と言います。赤っぽい魚体は高級魚の「キンキ」似。「キンキ」は「キンメ」似。名前を知っていても、売り場で名札が付いていないと見分けにくい魚です。実際の「ウスメバル」はこちらの魚です。魚体は赤く艶やか。

中泊メバル

 

青森県では「ウスメバル」を普通にメバルと呼んでいます。その普通のメバルが2018年、小泊漁協の出願により地域団体商標「津軽海峡メバル」に登録されました。これは地元の「ウスメバル」をどんどん売り込もうという姿勢の表れです。
地域団体登録商標は、「(一般商標と異なり)その産品の周知状況や取引実績などが必要。その証明として膨大な資料を提出してもらう。」(特許庁審査員)と言います。

 

「ウスメバル」の漁場は青森県、秋田県、山形県、新潟県の日本海沿岸。青森県での水揚げは4県中50%以上を占め、青森県内で断トツなのが「中泊町(小泊地区)」です。漁場は沖合の水深80~150mの岩礁域。漁法は厳格なルールを定めた固定刺し網と、1本釣りの優しい漁業です。

 

ということは「ウスメバル」の水揚げ“国内ナンバーワン”は中泊町?公式サイトやチラシだと“青森県内ナンバーワン”とPRしています。収穫エリアが限定される産品だと、控え目にエリアが分母になっていることがあります。広報的には「日本一」で売り込んだ方が、東京の大手マスコミの食いつきが良くなります。関係者に「ということは日本一になりますか?」と問うと、「日本一と言ってもいいでしょう」と返事をもらえました。

 

記者なじみのメバルは堤防や磯釣りの対象魚「黒メバル」、沖合で獲る「赤メバル」のこと。この2種類が本州で普通のメバルです。メバル科になると日本近海に40種類以上生息しています。「科」の話になると複雑性と意外性が入り混じるので難解です。

 

結局「中泊メバル」は、魚店で売れ残る普通のメバルではありませんでした。ただ、海釣り界以外で、メバルと冠する魚に光が当たるのが珍しいことです。

 

ご当地グルメに選ばれた「中泊メバル」

中泊町が「ウスメバル」をご当地グルメ「中泊メバル膳の刺し身と煮付け」としてデビューさせたのは7年前の2015年7月。きっかけは2016年3月の北海道新幹線開業前、青森県から町に奥津軽のご当地グルメを開発して欲しいと声がかかったことから。

 

そこで「中泊メバル」が選ばれました。それまで「ウスメバル」は地元で30年以上食べられ、築地市場で高級魚「津軽海峡メバル」として出荷されていました。先ほどの地域団体商標もこれらの実績が積み重なり認定されたものです。地元で普通に食べられている一方、東京の料亭でも出されている「ウスメバル」はストーリー性があります。

中泊メバル膳の刺し身と煮付け

中泊メバル膳の刺し身と煮付け

 

ご当地グルメとして開発された「中泊メバル膳の刺し身と煮付け」は中型メバル1尾以上で作る、「刺し身姿盛り(頭付き)」「煮付け」「潮汁」と、イカ刺し、小鉢料理。ご飯は地産地米「つがるロマン」。デザートに「エゴ海苔水ようかん」。この内容で1,800円。観光客にとってうれしいメニューです。10月には登場以来、販売累計10万食を達成して、多くのメディアに報道されました。

 

現在(2022年12月時点)、メニューは中泊町内の飲食店4店舗が提供しています。この11月、参画店だったレストラン1店舗が閉店しました。それに対し、町や漁協、商工会などの中泊メバル料理推進協議会は、公式サイトで「提供店舗は減りましたが、中泊メバル料理推進協議会は、より一層精進してまいります。」と伝えています

 

中泊に行ったことはありませんが、さんざん中泊を持ち上げてきました。そろそろ、「中泊メバル」を実食しなくては始まりません。ただ、「中泊メバル膳の刺し身と煮付け」は現地で食べるご当地メニュー。気持ちが中泊に近づいていても、今すぐには行くことはできません。

 

次に青森県に行く時、中泊町でメバル膳を食べ、あわよくば釣りをしようかと胸に秘めたところで。「中泊メバル」のお取り寄せグルメが購入できることを知りました。町の水産販売業者「卓立水産」が、鮮魚・煮付はもちろん、アヒージョ・アクアパッツァ・シチューまで扱っています。熱心に商品開発をしています。商品名に「メバ」と付いているのがお茶目です。

中泊メバル漬けめし

 

記者は昔から地元で食べられている漁師めし「テンカラ丼」を、お取り寄せ商品として開発した「中泊メバル漬けめし(1,200円)」を選びました。この商品は、中泊町長が愛媛県に行った際、「宇和島の鯛めし」を食べてインスピレーションを得たことが開発のきっかけとか。その後、小泊漁協と連携し、2021年、漁協婦人部が開発しました。漁協は、「ハマのかっちゃんたちの手料理、ぜひご賞味ください」と伝えています。

 

先ほど「テンカラ」という言葉が出てきました。実はこれも地元での「ウスメバル」の呼び名です。由来は昔、不漁が続いて漁師たちが途方に暮れていた時、突然、大量の魚が獲れ始めて、その光景が天から魚が降ってきたかのようだった。それから、「テンカラ」と呼ぶようになったという伝説があります。

 

編集部に「中泊メバル漬けめし」が届きました。パッケージの中は「刺し身」「海藻」「漬けタレ」「薬味」「お茶漬け用だし」の5点セット。刺し身は水揚げした魚をカット後、通常冷凍の約20倍の超高速冷凍技術で魚を凍結し、身の細胞破壊を防ぐことで鮮度と味を落とさないよう工夫されています。

 

食べ方はご飯にメバルを乗っける丼スタイル。商品は1膳目、2膳目と味変を提案しています。価格は1個1,200円、クール送料1,500円だからしっかり高級魚かと。お取り寄せ商品は「卓立水産」で購入可能。現地では漁協組合や道の駅、観光施設などでも販売しています。

 

それでは「中泊メバル漬けめし」を食べてみよう!

中泊メバル漬けめし
意外に大きなパッケージ
中泊メバル漬けめし
中泊メバル漬けめし
5点セットと作り方の説明  
青森県産米 青天の霹靂
お供は記者会のお土産・青森県産米「青天の霹靂」
中泊メバル漬けめし
5点セットを4-5分、冷水解凍します
中泊メバル漬けめし
メバルとワカメをタレに漬けしばし
中泊メバル漬けめし
1膳目、シンプルに新米に載せて 
中泊メバル漬けめし
コリッコリ。瞬間冷凍の技
中泊メバル漬けめし
2膳目、温めただし汁をかけて茶漬けで
中泊メバル漬けめし
表面が香ばしくなり、中はコリッコリ

 

魚身はピンクっぽい白身。ぱっと見からシズル感があります。
1膳目、コリッコリとした食感に唸った。解凍できている?いえいえ、凍っているのではなく、しなやかな硬さ、かむと甘みがある。スポーツで例えると体操選手のような?2-3分で完食。早速2膳目、熱いだし汁にコーティングされた身が香ばしく変化。そうくるか。かっぽいで(かきこんで)1分で完食。実においしくいただきました。コリッコリな食感、味はなじみの普通のメバルの仲間であることも確認できました。
忙しいい朝食や、女性に受けそうな気がします。また、更に大容量のサイズを作るとニーズがありそうです。

 

メバルの呼び名について

これまでメバルの呼び名がいくつか出てきました。文脈に合せながら選んだつもりですが、所々ブレてるかもしれません。
ここで町での名前の使われ方を整理します。漁師は伝説の由来から「テンカラ」、漁協、商工関係者は「津軽海峡メバル」「中泊メバル」、市民は普通にメバルと呼んでいるようです。確かにそうなりそうです。第三者が呼ぶなら、メバル以外、どれでも良いでしょう。

 

「津軽海峡メバル」に普通のメバルの地位向上を担ってほしい

今回注目した「中泊メバル」は、記者なじみの黒や赤とは違うメバルでした。しかし、メバルの名を背負う「ウスメバル」が、青森県中泊町を舞台に活躍していることを知れたのは良かったです。関係者に話を聞き、魚を食べ。記事にすることもできました。

 

2021年、「津軽海峡メバル」の水揚げ量は179tで売上高は1億8,000万。水揚げは日本近海の他の魚たち同様、以前より減少しています。大手水産会社のように魚を一網打尽にする漁法ではありません。やはり温暖化が原因か。釣り場でも、最近魚が釣れなくなったという話は挨拶代わりになっています。

 

一方、「津軽海峡メバルの単価が向上していて、売上げは落ちていない(中泊メバル料理推進協議会)と言います。複合的な要因があると思いますが、少なからずブランド戦略が寄与していることでしょう。

 

「津軽海峡メバル」の成功にあやかり、今後、都内の魚屋で半額シールが付いていても売れ残っている、黒や赤の普通のメバルが更に日の目を浴びることを願っています。

 

青森県中泊町について

青森県中泊町は津軽半島中央部の津軽山地の西側に位置。ウスメバルが水揚げされる「小泊地区」はアイヌ語で「ポン・トマリ」、小さな港という意味があります。観光スポットは、日本のステンドグラスのパイオニア作家「小川三知氏」の作品を展示する「宮越家」(夏。・秋の期間限定)。町の絶景スポット「眺瞰台(ちょうかんだい)」、本州最北端の津軽鉄道「津軽中里駅」が人気。

 

 

<魚種に興味を持った方へ> ウェブサイト「ぼうずコンニャク」と「WEB魚図鑑」を紹介します。前者は水産庁広報室の職員に聞いたサイト。職員たちの辞書になっていると言います。後者はFacebookグループで知ったサイト。日本のどこかで釣りをする誰かが名前不明の魚を釣り、その場で投稿すると、マニアックな魚でも数秒から数分内に回答が付きます。マニアック過ぎて笑ってぷっと笑ってしまいます。

 

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