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「第2回よい旅川柳・短歌賞」入賞作品募集~お題は「オーバーツーリズム」

 この度は、726作品のご応募をいただき、心より御礼申し上げます。本日(2024年10月24日)、入賞作品を発表いたしました。発表が予定より遅れましたことお詫び申し上げます。


今回のコンテストの最優秀賞および優秀賞には、観光庁が推進する「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」に選ばれた先駆モデル地域への旅行支援金としてQUOカードPayを提供します。これは、オーバーツーリズム対策に取り組む地域に実際に訪れ、その取り組みの効果を確認してほしいという意図を込めています。

 

 入賞作品と最終選考作品の発表に続き、オーバーツーリズムをテーマにした応募作品と全体の傾向について簡単な講評を述べさせていただきました。

                                                                   2024年10月24日 よい旅ニュース通信 編集部

 

<選考について>1次審査は編集部が726作品の中から20作品を選出。2次審査として、「観光庁オーバーツーリズムの未然防止・抑制による自足可能な観光推進事業」で採択された自治体・観光協会、DMO(事業者除く)などに匿名投票を依頼し、上位作品が選ばれました。

 

<最優秀賞> 賞品:QUOカードPay(3万円分)

【川柳】「もっと来て いや来んといて どっちやねん」都井の風(東京都)

(論評)オーバーツーリズムのジレンマを関西弁でユーモラスに表現しており、共感を呼ぶ。地域に来てほしい気持ちと、観光客が増えすぎることへの複雑な感情が見事に表現されています。

<優秀賞> 賞品:QUOカードPay(1万円分)

【短歌】「絶景を 見に来たはずが 人の海 これも奇観と カメラ構える」青山流星(兵庫県宝塚市)

(論評)ユーモアを交え、観光地の現実を皮肉っています。旅行者は絶景を期待しながらも、実際にはその絶景よりも、驚くほどの人混みをカメラに収めてしまうという皮肉が巧妙です。

<特別賞(5名)>賞品:QUOカードPay(1,000円分)

【川柳】「トラベルが  トラブルってる  観光地」ノンちゃん(愛知県名古屋市)

(論評)簡潔かつインパクトのある表現で、オーバーツーリズムの問題を見事に描写。楽しむための旅行が、皮肉にも「トラブル」へと変わってしまう現実を鋭く捉えています。

 

【川柳】「観光も 投資と同じく 分散化」岡田不二夫(埼玉県春日部市)

(論評)オーバーツーリズムの解決策としてよく言われる分散化を、投資のリスク管理と対比しています。観光地が一極集中すると、投資と同様に大きなトラブルを抱える可能性がある視点を鋭く表現しています。

 

【川柳】「来てほしい でも守りたい この暮らし」月のひかり(大阪府大阪市)

(論評)地域住民の切実な思いを、シンプルに表現した作品です。観光と地元の暮らしという対立する要素の間で揺れる葛藤が、共感を呼びます。最優秀賞の作品に描かれたジレンマとも重なります。

 

【川柳】「観光も 多極分散 穴場へと」天海楓(埼玉県狭山市)

(論評)オーバーツーリズムの問題に対する直接的な解決策を提案しています。観光地が一極集中するのを避け、「多極分散」という言葉を通じて、観光客を複数の隠れた魅力的な場所に分散させることの重要性を強調しています。課題と解決策がセットになった前向きな作品です。

 

【短歌】「やっときたバスに乗れずに次のバス 乗れば車内はまるで海外」さとぴん(滋賀県大津市)

(論評)インバウンドが増加している観光地での交通事情を的確に描写しています。外国人観光客が大きなトランクを持ち、バス車内の後方席を占有する様子が浮かび上がりました。

 

以下は、惜しくも入賞を逃した最終選考作品です。

<最終選考作品(13作品)>

【川柳】「あの景色 見に来たけれど この景色」むらさきまる(群馬県太田市)

【川柳】「訪日に 神社の神も 仕事増え」わっしょい(福井県坂出市)

【川柳】「推し旅は 押されない旅 癒し旅」小島富雄(神奈川県秦野市)

【川柳】「時期ずらし オーバー避ける 通リズム」通リスト(神奈川県川崎市)

【川柳】「人混みも 分けて回せば 福を生む」羊坊(神奈川県横浜市)

【川柳】「持ち帰る ゴミでポイント もらう旅」まこっちゃん(東京都)

【短歌】「穴場でも プレゼン次第で 新名所 スターになった 安村みたいに」山宗雲水(栃木県小山市)

【短歌】「ツーリズム 沈む場を避け 譲りゆく 穴場で心放たれ弾む」naoki(東京都三鷹市)

【短歌】「人だかり かかとを上げて 背伸びして 見ているものは スマフォの画面」村田真(静岡県静岡市)

【短歌】「情報と 人の流れを 見極めて ゆったり味わう 旅の刻」気まま(愛知県一宮市)

【短歌】「習慣が 違うからこそ 人が来る 違うからこそ分かりあいたい」松本俊彦
(京都府京都市)

【短歌】「インバウンド やっと覚えたのに 今流行っているのは オーバー なんちゃら」馬場和義(大阪府吹田市)

【短歌】「ツーリズム 持続可能な 観光へ 集中しない 集中させない」内橋弘文(兵庫県加古川市)

講評

 最終選考に残った作品や入賞作品には、ユーモアや皮肉を織り交ぜた作品や、観光地の分散化などの解決策を示唆した作品が多く見られました。これらの他、SNSが観光客の行動に与える影響や円安がオーバーツーリズムを悪化させていると指摘する作品も見かけられました。

 

 全体的に、オーバーツーリズムの原因は訪日外国人旅行者の増加や行動にあるとし、国や自治体の対応不足を指摘する作品も多く寄せられました。一部には、ここでは公開できない表現を含む作品もあり、オーバーツーリズムに対する否定的な感情が垣間見えました。

 

 観光立国を宣言する一方、国や自治体には、オーバーツーリズム対策において単年度予算の消化を目的とするだけではなく、持続可能な具体的成果が求められています。しかし、現状の対策において、「観光振興」「安心・安全な住民生活」「国民感情」をすべて両立させることは、非常に難しそうです。

 

 2024年末には、「オーバーツーリズムの予防・抑制による持続可能な観光推進事業」に取り組む各地域が、観光庁へ事業に関する報告書を提出します。その報告内容は、日本におけるオーバーツーリズムの今後を占う重要な試金石となります。

 

「第2回 よい旅 川柳・短歌賞」作品募集要領リリース(2024年6月20日)