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沖縄・水納島で県外の不動産会社と建築家、島の約30%でリゾート開発-MINNA PROJECTの意図とは?

 2024年8月29日、沖縄県、本島北部の本部町に属する水納島(みんなしま)で、総額600億円規模の富裕層向けリゾート開発が明らかになりました。開発には、外資系ホテル誘致や那覇空港と水納島を結ぶヘリポートの整備が含まれ、2028年にはホテルの部分開業が予定されています。(写真提供:OCVB)

沖縄県・水納島

 プロジェクト名称は「MINNA PROJECT」で、キャッチコピーは「みんなで紡ぐ新たな島の物語」。開発は大阪の不動産会社「京阪電鉄不動産」や、建築家・小池邦彦氏が代表を務め、全国でホテルや商業施設などを手掛ける東京の建築事務所「コイケデザインワークス」、同社グループで那覇市の不動産会社「ZEKKEI」が関与。今後、プロジェクトを4期に分けて進行させる計画で、初期段階として約150室のホテル棟が建設されます。

 

 水納島は周囲4.6km、面積47万平方メートルで、島民はわずか19名(2020年度国勢調査)ですが、ダイビングや夏の海水浴が人気で、年間6万人の観光客が訪れます。島内には2軒の民宿が営業していますが、ほとんどの観光客は本島の渡久地港からの定期船を利用して日帰りで訪れています。

 

 ZEKKEIは島面積の約30%にあたる13万平方メートルの元農地を取得済みです。2015年時点では、「約3分の1の土地を開発業者が取得したが、開発許可が認められず遊休地となっている」との情報があるため、今回、農地法の問題がクリアされ、行政により認可されたと考えられます。

 

 31日、地元の観光関係者に話を聞くと、「計画は29日、地元紙報道で始めて知った。農地法の問題が解決したのではないか。自然環境や島の文化の保全、災害時の安全対策、さらにホテル150室に見合う宿泊者のアクセスと島民や日帰り観光客の定期船との兼ね合いはどうなるか」と懸念点を話した後、「計画が地域住民にとっても心地よく、島の持続可能性につながるならば、新たな観光のモデルとして期待したい」と語り、情報不足からくる不安と期待、両面の心境を話しました。 最後に、「沖縄は観光立県として成り立っているから…」と漏らしました。

水納ビーチ
水納ビーチ(写真提供:OCVB)

 

 29日にプロジェクトが公表されると、SNSでは「島をそっとしておいてほしい」「金儲けしか考えていない」といった反対意見や、「なぜ許可が出されたのか」と行政の判断に疑問を投げる声。一方で、「島の存続のための島民の判断だ」「島に住んでいない人が自然を守れと騒ぎ出す」という反対意見に対する反論を添えた肯定的な意見も見られます。ただし、これらSNSの大まかな意見が島民一人一人の繊細な心のうちと一致しているかは分かりません。

 

 沖縄県では、竹富島で当初2025年開業が予定だった温泉リゾートホテル計画が島民の反対により頓挫している例があります。水納島には「水納島活性化委員会があり、島民の生活を守るための合意形成が行われている」(観光関係者)。水納島の富裕向けリゾート開発は、現時点で島民の合意が得られていても、具体的な計画が明らかになり、開発の進捗に伴いさまざまな課題が浮上する可能性があります。

水納島の民家
水納島の住宅(写真提供:OCVB)
沖縄県・水納島の小道
水納島内の道

 「MINNA PROJECT」の「みんな」という名称は、島名「水納」に掛けただけか、同時に水納島のステークホルダーを包括する意図があるのか。大阪の不動産会社と東京の建築家によるリゾート開発が水納島に与える影響について、今後の動向が注目されます。

 

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