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隈研吾設計 那珂川町美術館の劣化、クラファンで修繕費求める-修繕に関わる隈氏は応援メッセージを寄せる

 栃木県那珂川町にある「那珂川町馬頭広重美術館」は、開館から24年が経過し、建物の老朽化が進んでいます。町は2024年7月31日から修繕費用3億円の一部として、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングで1千万円を目標に資金調達を開始しました。(写真:©栃木県観光物産協会)

隈研吾設計の那珂川町馬頭広重美術館

 浮世絵画家、安藤広重の作品を展示する「那珂川町馬頭広重美術館」は、世界的建築家・隈研吾氏(当時46歳)が設計した木造建築です。建物は2000年に旧馬頭町(現那珂川町)が約12億円をかけて竣工しました。建物全体に地元産の八溝杉を使用し、自然と調和するデザインが特徴ですが、近年、屋根の羽目や壁の傷みが進んでいます。

 

 隈研吾建築都市設計事務所のホームページの実績紹介では、この美術館について、「この杉材は、不燃処理、防腐処理をほどこす事によって屋根材としても用いる事が可能となり、ルーバーによって太陽の光をカットし、また庇を長く出した独特の断面形状によって、高い環境性能を獲得することができた」と紹介されています。

 

 隈研吾氏は那珂川町のクラウドファンディングページに応援メッセージを寄せ、建物の老朽化について「現在と比べると木の保護塗料の性能が低く、傷みが進み、取り換えが計画されている」と説明し、「皆様のご支援を心からお願い申し上げます」と寄付を呼びかけています。クラウドファンディングは10月27日締め切りで、現在(9月7日昼)、55万円(達成率5.5%)が寄付されています()。なお、隈健吾氏は美術館の修繕についても設計を担当する予定です。

 

旧馬頭町当時の契約内容は不明

 9月6日、編集部は那珂川町に美術館竣工時の耐久性や修繕に関わる隈研吾設計事務所との契約内容について尋ねると、町は「旧馬頭町当時の契約内容は不明で当時の担当者はいない」と答えました。なお、竣工時の旧馬頭町長は川崎和郎氏で、2005年に小川町と合併して誕生した那珂川町の初代町長を2009年まで務めました。

ネットでは隈研吾建築への批判が増える

 この問題を報じたYahoo!ニュースのコメント欄に1級建築士と名乗る人物から、「隈氏は木の使い方や雨仕舞いを理解していないか、初めから腐ることを想定して設計している」と隈研吾氏に問題があることを提起する意見が寄せられました。これに共感する声も多くみられます。

 

 SNS上では、隈研吾氏が設計した公共施設で、「浅草観光文化センター」は早期修繕が行われ、築10年余りの「アオーレ長岡」でも修繕が計画されていると投稿があり、民間施設を含む関連情報が広がり、議論を呼んでいます。

有名建築家設計「公共施設」と地方の持続可能性

 隈研吾氏が手掛ける公共施設は全国各地に広がり、その斬新なデザインと建築手法が注目を集めています。しかし、隈研吾建築が一定の集客効果をもたらしても、その話題性だけで地域の衰退を食い止めるのは難しい現実があります。さらに、人気が落ち着き、修繕が必要となった際には、維持補修が自治体の財政を圧迫する懸念もあります。

 

 地方の有力企業が自社の予算で建設した施設であれば問題は指摘されませんが、多額の税金が投入される公共施設では、有名建築家の作品が地域に与える具体的な効果とその持続可能性を、建築家との契約時にどう確保するかという議論が必要かもしれません。

フジテレビ報道後の注目と寄付の状況

 今回、9月4日にフジテレビが那珂川町馬頭広重美術館の劣化問題と、修繕費を求めるクラウドファンディングについて大きく報じました。その後、地元メディアや首都圏のNHKでも取り上げられましたが、現時点で集まっている金額は目標の5.5%に留まっています。

 

 那珂川町が実施しているのは、ふるさと納税の仕組みを活用した「ガバメントクラウドファンディング」で、豪華な物産品などのリターンはありません。寄付は募集背景や具体的な寄付の使途、将来へのビジョンに共鳴できた際に行われます。

 

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