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【地元から通信】白神山地の麓は、“驚きと感動のミュージアム” (青森県深浦町)

シリーズ第7回「よい旅⇌地元から通信」です。今回、青森県深浦町の鈴木マグロ―さんから寄稿が届きました。鈴木さんは、昨年秋、青森県庁観光課の職員さんから「深浦町に熱い人がいる!」と紹介を受けました。町は昨年8月の台風・豪雨被害を受けていて、職員さんはそのことも気にかけていました。そして、なんと下の名前は「マグロ―」。名前を聞いた時、なぜか日本好きの外国人職員と勘違いしまいました(笑)どんな人なのかは、読み応えのある文章から感じてもらえるかと。 深浦町は、世界遺産「白神山地」の麓の自然豊かな地域。春から夏、久しぶりに行きたい遠くの旅先にもぴったりです。

深浦町 白神山地

青森県の西の端、県内では“陸の孤島”などとやゆされ、3年前にやっと町内中心部にコンビニがオープンした“筋金入りの不便な町・深浦”ですが、世界遺産の白神山地はもちろん、あちこちに絶景スポットが盛りだくさん。写真映えの宝庫なんです。

 

世界自然遺産「白神山地」で知られる深浦町は、青森県の日本海側に位置する小さな町です。人口は現在7,251人(2023年2月末)。
青森県西南部に位置し、南は秋田県に接しており、西は日本海に面し、山間部はユネスコの世界遺産に登録された『白神山地』に連なっています。
白神山地は、青森県南西部から秋田県北西部にまたがるおよそ13万haにおよぶ山岳地帯の総称で、“深山幽谷”という言葉がそのまま当てはまるような大自然の山です。この白神山地の中でも最も自然度が高い原生的なブナ林で占められている部分にあたる1万6971haが、1993年12月、屋久島(鹿児島県屋久島町)とともに日本で初めて世界自然遺産に登録されました。エリアは、青森県と秋田県にまたがり面積比は青森県側が広く約3対1の割合、東京ドーム3610個分にもなります。

 

登録面積は、青森県深浦町、鯵ヶ沢町、西目屋村、秋田県藤里町の3町1村に位置しており、深浦町の大きさは4120ha。全体の24%、東京ドーム約900個分です。
「陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程または生物学的過程を代表する顕著な見本」という世界自然遺産の基準を満たし、東アジアを代表する原生的なブナ林が広い面積で存在していることがユネスコに評価され、その後、青森秋田の両県は世界遺産白神山地憲章で「白神山地は天然の博物館です。尊い遺産が伝えられたことに感謝し、一人ひとりがルールを守り、ブナ天然林の美しさを残すため、ベストを尽くしましょう。」と宣言しています。

 

2023年、世界自然遺産登録30周年を迎える白神山地の西の麓(ふもと)深浦町には白神の恩恵を受けたバラエティーに富んだ感動コンテンツがたくさんあるので、ご紹介しましょう。

 

「奇跡の青」と呼ばれる幻想的な池

白神の玄関口となる「十二湖(じゅうにこ)」は白神山地の西の端に位置し、大小33の湖沼が海抜250m付近の台地に連なるようにたたずんでいます。標高940mの崩山(くずれやま)の中腹・大崩(おおくずれ)から眺めると大きい池が12見えたことから「十二湖」と呼ばれるようになりました。780haの広さを誇り、津軽国定公園に制定されています。その十二湖の中でも一番の人気スポットは青く澄んだ水面が幻想的な「青池」(あおいけ)。青インクを流し込んだような水面にブナの木々が映え、神秘的な雰囲気を醸し出しています。

 

私のおすすめの時間帯は、季節や天候にもよりますが、やはり陽の高い11時から13時ごろ。14時ごろでもギリセーフ!。ここで評判なのがご当地ソフト「青池ソフト」。実は「青池ソフト」は私が考案しました。JR十二湖駅で限定販売されているので、ぜひご賞味ください。

深浦町 白神の玄関口「十二湖」
深浦町 白神山地

 

美しい海岸線を走る観光列車「リゾートしらかみ」

青森、弘前から五能線を通って秋田を結ぶ「リゾートしらかみ」は、日本海の絶景が楽しめる鉄道ファン垂ぜんの観光列車。環境にやさしいハブリッドシテムを搭載。通常車両よりも床が高く、窓も大きく採られ眺望も抜群。沿線有数の絶景スポットでは、徐行運転になり、車内アナウンスで見どころを紹介してくれます。国内屈指の人気ローカル線で白神西海岸の絶景を巡ってみましょう。

 

冒頭でもありましたが、昨年8月、当地は記録的に大雨に襲われ、生活インフラ等が被災し、JR五能線沿線も路盤流出や護岸流出、土砂流入など甚大な被害を受けました。しかし、全国の皆さま方からの温かいご支援、JRさんの最強の現場力により、当初年単位と想定された復旧作業が猛烈なスピード感で進み、わずか約4か月後の12月23日、全線運行が再開しました。感謝(涙)。年末の折、沿線住民は胸をなでおろしました。

青森県 深浦町 観光列車「リゾートしらかみ」海沿い
深浦町 観光列車「リゾートしらかみ」海沿い
五能線の旅【公式サイト

 

ご当地グルメ「深浦マグロステーキ丼」が大人気

白神山地から湧き出るミネラル豊富な水は、川から海へとつながり、山の幸と海の幸を育んでいます。そして、このように山の栄養分を豊富に含んだ川、海を潤して「深浦マグロ」などが捕れる豊かな漁場が育まれ、深浦町内の「天然の良港」が点在しています。。“青森のマグロ=大間”というイメージが強いと思われますが、実は深浦マグロの水揚げ量は例年、県内ナンバーワンを誇っています。。そして、深浦町が提案しているご当地グルメが、2013年にデビューした「深浦マグロステーキ丼」。深浦産の天然本マグロ尽くしのどんぶり御膳です。

 

私がマグローを名乗る由縁がこの「深浦マグロステーキ丼」の存在。詳しくは、公式サイトから「ご当地グルメヒーローズ(東奥日報 報道部長 著)」をぜひご購入いただき、紐といていただけますよう(笑)

青森県 深浦町 深浦マグロステーキ丼
天然の本マグロを3種の丼(刺し身・片面焼き・両面焼き)と季節の香り物・汁物・デザートで【公式サイト

 

全国から温泉好きが訪れる!温泉だって世界遺産級!

温泉ファンが「一度は入ってみたい!」と憧れるのが全国屈指の名湯・黄金崎不老ふ死温泉(こがねさきふろうしおんせん)。名物の波打ち際の露天風呂は「日本海まで1m」で、一番のお楽しみは夕暮れ時。雄大な日本海の水平線に沈んでいく真っ赤な夕日を眺めながらぜいたくな時間を過ごせます。写真を見て心奪われませんか?

 

こちらは絶景温泉として有名で、人気は温泉に先行しがちですが、実は絶景温泉と同じぐらい大好評なのが、お宿のお食事です。地元の網元から直接仕入れる海の幸はチョー新鮮!天然の本マグロはもちろん、アワビやサザエなど旬の素材を生かした調理法で夕飯も朝食もお客さまから喜ばれているんですよ。

青森県 深浦町 金崎不老ふ死温泉
黄金崎不老ふ死温【公式サイト

 

千畳の畳を敷いて宴会開いた?

約12kmにわたって続く岩棚の海岸線・千畳敷海岸。JR五能線「千畳敷駅」の目の前に広がる景観に優れた磯浜の海岸です。寛政4年(1792年)の大地震で、海中の海床(うみどころ)が隆起して水面に現れたと言われています。また、かつてこの地を治めた弘前藩の藩主が、戦場の畳を敷いて宴会を開いたことからこの名が付いたと言われています。
周辺には奇岩怪岩も多く、代表的なのは「かぶと岩」で、その名は西洋の兜(かぶと)に似ていることからです。

青森県深浦町 千畳敷海岸
青森県深浦町 千畳敷海岸

 

日本一大きなイチョウ 通称「ビッグイエロー」

「北金ヶ沢の大銀杏(きたかねがさわのおおいちょう)」。雄樹で樹齢は約1000年と言われ、中世の時代にこの地を支配していた安藤氏の別院があった場所と伝えられています。幹から垂れ下がっている乳房に似た形をしている気根に触れると、母乳の出がよくなると言い伝えられていることから「垂乳根の公孫樹(たらちねのいちょう)」とも呼ばれています。環境省が平成11、12年度に実施した第6回自然環境保全基礎調査巨樹・巨木林フォローアップ調査によると、幹周り22.0mは樹種別のイチョウの部で全国第1位、全樹種で第4位(現在は3位)の巨木となっています。平成16年に国指定天然記念物に指定されました。

 

また、11月上旬から下旬にかけて夜間のライトアップが灯され「ビッグイエロー」と称される美しい姿を見られます。
高さはおよそ31mとビルの10階分の高さに相当し、付近の住宅の大きさと見比べるとその巨大さがよく分かります。

 

日本一の大イチョウのライトアップを12年前に企画考案し初開催した際に、あまりの感動と衝撃を受け、私が思いつきで「ビッグイエロー」と名付けました。今は青森を代表する初冬のライトアップイベントの一つになりました。

青森県深浦町ビッグイエロー

 

「白神」の由来

この由来話し、個人的に好きなのです私。
さいごに、白神の名の由来について触れさせてください。
実は諸説あって定まったものがありませんが、一つには、人々を守る神のような存在であるという説。漁師は海に出ると白い雪をかぶった白神山地を目印にし、海上で迷ったときは「白神大権現を念ずると、白い旗を携えた神が現れて進路をお示しになる」という云われもあるそう。山のマタギにとっても白い雪をいただいた白神岳は灯台のような役割をもっていたらしいと云われます。

 

一方、アイヌ語由来ではないかとする研究者もいます。東北地方の先住民はアイヌ民族で、東北地方の地名にはアイヌ語に由来する土地がたくさんあります。アイヌ語では岩のことを「シラー」と言い、神のことを「カムイ」と言います。したがって、アイヌは白神岳には岩があり神様がおられるとみなして「シラー・カムイ」っと呼び、、それをアイヌと一緒に白神岳に登った和人(倭人)が「白神」という字をあてて呼ぶことにしたのではないか、という説です。北海道渡島半島にも「白神岬」という岬がありますが、ここの由来も諸説あるようです。ぜひミステリー番組で取り上げてほしいテーマです(笑)

 

今年、世界遺産登録30周年を迎える「白神山地」。
“天然の博物館”で、感動とミステリーを体験してみてください!

参考・引用文献:白神山地「麓から頂まで」(泰斗舎) 

日本海越しに見る白神山地 

 

深浦町へのアクセスは、「青森空港」から車で2時間、「秋田空港」から車で2時間40分。公共交通は「弘前駅」からJR五能線で「深浦駅」まで約2時間20分~。秋田駅からJR五能線で「深浦駅」まで約3時間~。

 

文章:鈴木マグロー(深浦町観光課)

2013年6月、青森県内初の新・OMOTENASHIご当地グルメ「深浦マグロステーキ丼」のデビューに携わったことから、同年11月に町長命令によりマグローを名乗る。立場上マグロは大好物だと公言しているが、たまたま地元メディアに「好きな魚は?」とインタビューで聞かれ、「実はサバ」と答えてしまい、地元のマグロ漁師たちにこっぴどく𠮟られる。現在マグステ丼に続く、魅力的な商品を思案中。

 

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