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博報堂の補助金事業で不透明な委託構造が判明-会計検査院の調査で明らかに

 経産省 資源エネルギー庁が実施した総額約369億円の電気・ガス料金高騰対策の補助金事業において、補助事業者として事務局を担当した広告大手「博報堂」が不透明な委託構造を取っていたことが、会計検査院の調査で明らかになりました。(写真:博報堂が入居する赤坂bizタワー)

博報堂 赤坂BIZタワー

 問題となっているのは、2022年度に資源エネルギー庁が実施した「電気利用効率化促進対策事業(節電事務局:約49億円)」と「電気・ガス価格激変緩和対策事業(前期事務局:約320億円)」の2つの事業です。

 

 会計検査院の調査によると、「博報堂」が管理した2つの事業での事務費総額約369億円の約70%(約269億円)が委託に回され、その中の約248億円が100%子会社の「博報堂プロダクツ」に割り当てられました。さらに、約221億円が再委託に回され、そのうち約193億円がイベント会社の「ヴァリアス・ディメンションズ」に再委託されました。

※会計検査院の発表では、各事業ごとに金額と委託費の割合が示されているものを合算。

 

 事業体制では、ほかに複数社が委託・再委託・再々委託の体制に組み込まれ、各事業において博報堂から博報堂プロダクツ、そしてヴァリアス・ディメンションズへの委託率のみ70%以上から90%以上で突出していました。

 

 なお、経産省は委託率が50%を超える場合、応募時にその理由を文書で説明することを義務付けているため、博報堂から経産省に対し、理由書が提出されていました。

会計検査院による博報堂の調査
電気利用効率化促進対策事業(節電事務局)委託構造と各社の担当業務(画像拡大可能)
会計検査院による博報堂の調査
電気・ガス価格激変緩和対策事業(前期事務局)委託構造と各社の担当業務(画像拡大可能)

 

 しかし、会計検査院は博報堂が作成した理由書に関しては、委託先の妥当性を確認するのが困難であり、相見積もりが用意されていないため選定理由の正当性が不明瞭であると指摘しています。

 

 さらに、経産省の判断過程についても記録が残されておらず、透明性に欠けている点が問題視されています。

 

 経産省は、「委託率が50%を超える場合、理由書の提出を義務付ける」ほか、「相見積もりで最低価格の提示者を選定するか、そうでない場合は理由書で妥当性を判断する」、「担当課室は採択理由を部局長に提出し、部局長は採択決定に確認する」ことを定めています。

 

 編集部が経産省 エネルギー庁の現担当者に尋ねたところ、「我々には博報堂の応募書類(約300頁の提案書および理由書)で委託先選定理由が読み取れる」と、当時の担当課室の判断が妥当であることを強調しました。

 

 一方、担当課室に採択理由の記録が残っていない点について、「当時の担当者が書類を保存しなかった」と認めました。会計検査院からの指摘を受けて、当時の担当者の責任が問われるのか聞くと、「担当課に委ねられる」とコメントしました。

 

 編集部が会計検査院の担当者に問題点を訪ねたところ、経産省の事業監督者としての態度や、博報堂による公共事業運営の透明性に問題があると指摘しました。その背景に、「持続化給付金事業の教訓を踏まえ、公共事業における複雑な委託構造が続いている現状について、社会的に広く認識され、議論されるべき」と言います。

 

 博報堂は公式サイトで調達方針において法令遵守と透明性の確保を謳っていますが、会計検査院の指摘によると、その理念が適用されているか疑問視されます。また、適切な業務管理と公正なパートナーシップに欠け、利益最優先の姿勢が疑われます。

 

 親会社の博報堂DYホールディングスの公式サイトではグループの行動規範として、利益と倫理の選択を迫られた際、「いかなる経済状況でも倫理を優先する」と約束されています。なお、同社は11月8日、新たなサステナビリティ方針を公開しました。

 

 博報堂の企業活動を巡っては、東京五輪の談合事件で今年7月、会社に罰金2億円、子会社の元社長に懲役1年6か月、執行猶予3年の判決が言い渡されています。

 

会計検査院は11月6日、2023年度の決算検査報告書(2022年度事業含む)を石破茂首相に提出しました。税金の無駄遣いなど指摘された事業は345件(約648億6200万円)に上り、そのうち法令違反にあたる事案は294件(77億3600万円)でした。公共事業10件に対して1件以上で不正が発生していました。

 

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