2025年3月5日(水)、万博協会は、「2025年日本国際博覧会 開幕に向けた広報支援業務」の委託先として、老舗PR会社「共同ピーアール」を選定したと発表しました。契約候補者の発表は2月中旬を予定していましたが、開幕が迫る中で約2週間遅れての公表となりました。

大阪万博の開幕機運向上を担う開会式は広告大手「電通」を代表とする共同企業体が担当する一方、開幕を担う広報支援業務は「電通PRコンサルティング」が落選しました。今後、「共同ピーアール」が低迷する万博の機運を盛り上げる役割を果たせるのか、注目が集まります。
審査員は「実践的な危機管理」と「メディア対応力」を評価
開幕が目前に迫り、契約候補者(最優秀提案者)の発表が遅れるなか、ダークホースの共同ピーアールが選定されました。万博協会はその理由として、提案内容の分かりやすさや広報支援業務のノウハウを評価。さらに、危機管理体制の構築、広報経験が浅い担当者へのメディアトレーニング、担当者の実績や信頼性が認められました。また、記者の特性に合わせたオリジナルのメディアキットも評価ポイントとなりました。
今後、共同ピーアールは本契約を締結し、3月の開幕直前期から4月30日までの2カ月弱という短期間で広報業務を担当。単なる広報支援を超え、低迷する機運をどこまで盛り上げる役割を担えるかが最大の課題に取り組みます。
短期間で1,800万円の広報予算、機運醸成の成果必須
今回の共同ピーアールの提案金額は1,785万円。スタッフとノウハウの提供が主体の一般的な広報支援業務としては短期間にもかかわらず、破格の受託額であり、それに見合う成果を示すことが求められます。
この多額の予算の背景には、大阪万博の機運が低下し続けている現状があります。三菱総合研究所が2024年10月に実施した生活者意識調査では、「万博に関心がある」と答えた割合が同年4月の調査と比較して減少傾向にあり、機運の低迷が現在の前売りチケットの販売不振にも影響を与えています。
開幕の目玉 開会式の企画運営は電通JVが担当
大阪万博の開幕において最も注目される開会式の企画・運営は電通JV(共同企業体)が担います。機運醸成の向上は開会式のインパクトに大きく左右されると考えられ、電通がどのような演出で国内外の関心を引き付けるかが焦点となります。
その上で、開会式を控えた広報支援を担う共同ピーアールと電通の連携がカギを握ります。今回の業務提案では、NDA(秘密保持契約)のもとで共同ピーアールに開会式の演出内容が共有されていると考えられますが、開幕期の広報活動と演出の連動性がどこまで確保されているかが課題です。
広報支援の枠を超え、国民の関心を取り戻せるか?
共同ピーアールは1964年創業の老舗PR会社で、2005年にPR業界初の上場。その後、創業者が経営から退き、2015年に名古屋の広告会社「新東通信」の傘下に入りました。なお、同社は愛知万博での業務経験があります。一方、共同ピーアールは大手企業の顧客を多く抱えていますが、これまで電通グループが独占してきた大型国際イベントで機運醸成業務に対応できるのか不透明です。
しかし、2カ月間で約1,800万円の受託額を得る以上、それに見合う成果が求められます。社会的責任の重い上場企業でもある共同ピーアールは、大阪万博の広報支援業務の成否がその後の業績に影響を与える可能性があります。なお、同社は2024年7月、関西エリアの経済発展を見据えて、大阪支店を開設していました。
共同PRと万博協会に取材、広報支援の行方は?
よい旅ニュース通信は5日夕方、共同ピーアールに「万博業務担当の受け止め」を、万博協会には「契約候補者公表の遅延理由」と「電通グループ落選の理由」について尋ねると、共同ピーアールは「正式契約前のため回答が難しい」と説明し、万博協会は「現時点で回答を持ち合わせていない」と述べています。