証券取引等監視委員会は2025年5月22日、株主対応支援を手がける「IRジャパン」(東京都千代田区)の本社に対し、金融商品取引法違反(インサイダー取引)の疑いで強制調査を実施した。同社では2023年にも、親会社の副社長がインサイダー取引で有罪判決を受けていた。(写真:IRジャパンオフィス)

捜査対象となったのは、同社の社員が顧客企業の未公表情報を知人に漏えいし、その情報を元に株式取引を行った疑い。証券監視委は、東京地検特捜部への告発も視野に入れ、事実関係の調査を進めている。
親会社のアイ・アールジャパン・ホールディングスは同日夜、「子会社の社員が証券取引等監視委員会の調査を受けていることは事実であり、グループとして調査に全面的に協力する」との声明を出した。
2023年には、親会社アイ・アールジャパン・ホールディングスの元副社長・栗尾拓滋氏が、自社の業績下方修正に関する未公表情報を自身の知人女性2人(文春報道では「愛人」とも)に漏えいし、株式の売却を勧めたとして、金融商品取引法違反により、東京地方裁判所で懲役1年6カ月・執行猶予3年の有罪判決を受けた。
当時、IRジャパン社長・北村雄一郎氏は、「業務の急拡大に対し、体制が追い付いていなかった。今回、うみを出すいい機会になった」とメディアの取材に応えていた。それからわずか2年、再び浮上したインサイダー取引の疑惑は、北村氏の「ガバナンス体制強化」へのコミットメントが表面的な言葉であったことが明らかになった。
IRジャパンは、上場企業の情報管理を担う企業として、厳格な内部規律とガバナンス体制の徹底が当然視され、事業を行う以上、1件の不正も許されない。
一方で、その管理体制にほころびがあれば、社内に未公表情報が集積する構造上、同社関係者では「インサイダーが横行し得る温床」にもなりかねない。