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【独自調査】2023年末 生活者400人が振り返る「旅行業界」の不正問題と次の懸念、期待など-業界信頼度低下40%

旅行・観光ニュースサイト「よい旅ニュース通信」は、全国の20代から50代の男女400人を対象に旅行業界の不正行為などに関して意識調査(計5問)を実施しました。

【独自調査】旅行業界に関する生活者アンケート

調査結果によると、コロナ禍を背景にした旅行業者の不正行為が、生活者の旅行業界への信頼度を低下させていることや、今後、大型国際イベント(大阪万博など)や全国旅行支援、インバンドなどの公共事業における不正の懸念が示されました。また、旅行業界への期待として、安心・安全、信用・信頼性を求めているとともに、旅行内容において生活者ニーズと旅行業界の展開との間に、ギャップが存在していることが判明しました。

 

【調査背景】

2020年以降、新型コロナの影響で旅行・観光業界は大きな打撃を受けました。この期間中、旅行業者を支援するための公共事業が増加しましたが、同時にGoToトラベルなど旅行支援事業の不正受給やコロナワクチン関連事業の水増し請求、談合入札など、旅行業者による不正が相次ぎました。不正の多くは、旅行業界を代表する大手企業によるものでした。アフターコロナ時代、これらを振り返り、旅行業者や旅行業界に対する生活者の意識を確認しました。

 

【調査概要】

  • タイトル:旅行業界に関するアンケート
  • 告知文 :回答者の仕事観や生活感に照らし、ご回答をお願いします。
  • 設問数 :全5問(本調査9+参考2問(テスト調査)
  • 実施日 :2023年12月6日
  • 調査方法:インターネット調査「Freeasy提携パネル利用」(アイブリッジ㈱)
  • 対象者 :全国400人 / 20~59歳(10歳刻み×100人・男女各50人)の均等回収割り付け

 

[Q1]問題の認知⇒ 旅行業法の違反から公共事業の不正行為へ

コロナ禍において、旅行業者が公共事業に関与する機会が増加し、新たな問題が浮上しました。回答者から最も問題視されたのは、「旅行支援事業における不正受給(46.5%)」と「委託事業における水増し請求(36%)」です。それらと比較して、「旅行商品の虚偽表示(20.5%)」や「不適切な広告内容(7%)」など、以前からある「旅行業法」の違反に対する認識は下回っています。さらに、「クレジットカード情報の漏洩(31.7%)」も重大な問題として認識されています。これについては最近、宿泊予約サイトのシステムトラブルや旅行会社のスタッフによる不正が報じられています(二択)。

 

生活者が振り返る旅行業界調査Q1データ

 

[Q2]不正行為と生活者⇒ 旅行商品の購入意欲が低下(約70%)※

不正を行った旅行業者の商品に対する購入意欲は、回答者の約70%が否定的な見解を示しています。具体的に、「できる限り購入したくない」と答えた人が32%、「絶対に購入したくない」と答えた人が34.5%でした。これらの結果から、不正行為が生活者の信頼を損ない、結果として旅行業者の商品に対する購入意欲を低下させる可能性が高いことが示唆されます(単一)。

※選択肢「あてはまるものはない」および「その他」を加えない予定でしたが誤設定しました。それらを省いた「調査対象は324人」です。

 

 

生活者が振り返る旅行業界調査Q2データ
※必ず購入したい(3%)・できる限り購入したい(1.75%)

 

[Q3]不正行為の影響⇒ 旅行業界全体の信頼度が低下(約40%)

次に、不正行為を行った旅行業者が旅行業界全体のイメージに与える影響を分析しました。旅行業界への信用と信頼に関して、49.5%の回答者が「変化なし」と答えたのに対し、「わずかに信用・信頼が減少した」と答えた人が20.5%、「大幅に信用・信頼が減少した」と答えた人が20%でした。合計約40%の回答者が信頼度の低下を感じていて、不正行為が新たに生じた懸念層を形成し、業界全体のイメージ低下に影響していることが明らかになりました(単一)。

 

生活者が振り返る旅行業界調査Q3データ

 

[Q4]不正行為の懸念⇒ 全国旅行支援や大型国際イベント (大阪万博など)、インバウンド

将来発生する可能性がある不正行為に関する公共事業について、最も多くの懸念が「大型国際イベント(大阪万博など)」に対して示されました(40%)。次いで、「全国旅行支援事業の審査過程」に対する懸念が38.5%、「インバウンド拡大」に対する懸念が34.75%でした。「大型国際イベント(大阪万博など)」への懸念は、東京五輪での不正の記憶や予算膨張が続く大阪万博への感情が反映されていると考えられます。「全国旅行支援事業」への懸念は、GoToトラベル事業での不正の記憶が反映されている可能性があります。「インバウンド拡大」の不正発生への懸念も高まっています。これらの結果から、公共事業における透明性の確保と監視体制強化が求められていることが明確になります(二択)。

 

生活者が振り返る旅行業界調査Q4データ

 

[Q5]生活者の期待⇒ 安心・安全、信用・信頼および、生活者ニーズと業界の展開のとの間にギャップ

調査では4つの選択肢から選んでもらい、対比する形でどちらが好まれるかを分析しました。最も支持されたのは、「安心・安全な旅行内容の提供(65.75%)」と「信用・信頼性のある企業行動(64.5%)」で、これはコロナ禍の生活者の行動と旅行業者への不信感が影響が反映されているのでしょう。続いて、「日本人に適した旅行内容(53.24%)」と「安価で参加しやすい旅行内容(49.25%)」が支持されました。一方、「外国人に適した旅行内容(18.75%)」と「高額で高付加価値の旅行内容(16.75%)」の支持は低く、生活者ニーズと旅行業界の展開との間に、ギャップが存在することが示されました(四択)。

 

生活者が振り返る旅行業界調査Q5データ

 

[参考1・2]は本調査前の11月上旬、「16業種に勤める現役ワーカー279人」を対象に同様のテーマでテスト調査を実施した一部の結果です。サンプル数は異なりますが、本調査と異なる設問の回答を紹介します。

[参考1]責任の所在⇒ ほぼ組織内の問題で、行政や業界団体、特にマスコミが低い

「不正行為や問題の責任」の所在について、企業内部と外部ステークホルダーを細分化して選択肢にしました。回答者の約80%が「経営者や役員」に最も責任があると答え、続いて、約60%の回答者が「中間管理職」に責任があると指摘しました。一方、旅行事業者を監督する「国」や「地方自治体」「業界団体」に向けた責任の認識は20%台に留まりました。さらに、「マスコミ」に関しては5%以下でした。この結果から、調査対象の現役ワーカーは、不正行為の責任はあくまで旅行事業者内部の問題であると指摘しています。なお、マスコミの責任が5%以下と評価されたことは、マスコミの役割である監視や報道に対する役割が期待されていないことが示されている可能性があります(三択)。

 

(参考)生活者が振り返る旅行業界調査Q1
※消費者や旅行者(5.02%)・報道機関・メディア(4.66%)・広報部門(4.3%)・競合会社(2.87%)

 

なお、企業内部で広報部門だけスコアが低いこと(4.3%)について、現役ワーカーが、社内の広報部門の役割を低く評価していることを示唆しているかもしれません。そのため、一般社員と広報部門を比較し、一般社員の方を選んだ可能性があります。一方、広報部門には、企業内の道徳的基準を維持し、社会的な窓として機能することで、組織内の不正行為を監視する任務があります。この役割は企業の透明性と説明責任を保つ上で重要です。日本企業の広報部門は、都合のよい情報ばかり発信を行い、広報の基本としての、パブリックリレーションズ(組織と社会の望ましい関係作り)についての実践が疎かになっているのかもしれません。

 

[参考2]責任の取り方⇒ 改善を求める(約80%)

「不正を行った旅行業者の責任の取り方」について、約80%の回答者が「改善が必要」と答えました。公共事業で不正が発覚した場合、刑事事件されず、不正金額の返金や公共事業の指名停止に留まる傾向があります(単一)。

 

(参考)生活者が振り返る旅行業界調査Q2データ
※部分的に問題はない:全体的には適切(4.66%)

 

大手旅行業者によるコロナワクチン事業の水増し請求問題では、関与した多くの自治体名が非公表のままです。編集部が旅行業者の広報部に自治体名非公表について理由を問うと、「自治体が公表を控えているため、(当社から)公表できない」との回答を得ました。旅行業者と地方自治体間でコロナワクチン事業の予算において、国民の税金使用に対する認識の希薄さが示されています。

 

【業界団体による再発防止策への取り組み】

業界主要団体の日本旅行業協会は12月7日、業界の不正問題に対処するために、コンプライアンスに関する有識者委員会と内部通報相談窓口を設置することで、再発防止に努めると発表しました。本年度中に、具体的な再発防止策が取りまとめらる予定です。一方で、これまでも旅行業者は、自社の公式サイトでコンプライアンスやガバナンスにコミットメントを表明して生活者や株主にアピールする中で、不正行為が相次ぎました。これを踏まえ、日本旅行業協会はどのように進化したコンプライアンス計画を発表するのか注目されます。

 

※この調査内容は報道機関に限り掲載可能です。希望する報道関係者はお問合せください。企画内容によりローデータ提供についてもご相談賜ります。

 

【調査】よい旅ニュース通信について

「よい旅ニュース通信」(2022年6月正式公開)は、地域観光、宿泊、飲食、交通、旅グッズなど、旅行・観光関連の最新情報を取り扱うニュースサイトです。ニュース以外も取材レポートや寄稿記事に加えて、ガイドコンテンツ「全国ご当地役所食堂」などを配信し、日本全国の「よい旅」を増やす活動をおこなっています。そのため、旅行業界の負の側面にも注目しています。旅行業界の現場からさまざまな情報提供を受付けています。

 

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