menu
  • Instagram
  • Twitter
  • Facebook

【試乗レポ】陸のクルーズで瀬戸内巡り「YUI PRIMA OLIVIA」―日本一長い高級路線バス、9月末まで半額以下

瀬戸内しまなみ海道
瀬戸内しまなみ海道

 2025年は、3年に一度の「瀬戸内国際芸術祭」の開催年。春会期が終わり、いよいよ8月1日~31日まで夏の会期、10月からは秋の会期を控える。今後、芸術祭を目的に瀬戸内訪問を考える人におすすめしたいのが、移動そのものを特別な体験に変えてくれるラグジュアリーなバス旅だ。記者は今春、試乗体験するために、東京から瀬戸内に訪れた。

※掲載写真には、筆者撮影分に破損があり、主に神姫バス提供の公式写真を使用しています。あらかじめご了承ください。

 

「YUI PRIMA OLIVIA(ユイ プリマ オリビア)」とは?

その名も「YUI PRIMA OLIVIA(ユイ プリマ オリビア)」。兵庫県姫路市のバス会社「神姫バス」が今春から運行を開始した高級路線バスだ。

 

同社はこのバスを「丘のクルーズ」と打ち出し、瀬戸内の主要都市や人気観光地をつ結びながら、各地でガイドツアーや伝統・文化体験を提供。全8ルートを定期運行し、新たな旅のスタイルを提案している。なお、各ルートや運行スケジュールは後述する。

 

「YUI PRIMA OLIVIA」は、瀬戸内の観光名所をめぐるバスでありながら、いわゆるパッケージツアーではなく、定期観光バスとして運行されている。予約人数にかかわらず、定められた路線と時刻で運行される「一般旅客自動車運送事業」として、正式に営業許可を受けている点が特徴だ。

 

東の神戸から西の広島まで、約450kmの瀬戸内沿岸を横断するそのルートは、まさに「日本一長い定期観光バス」といえる規模となっている。

高級観光列車の哲学を定期観光バスに―鉄道デザイン第一人者 水戸岡鋭治氏

「YUI PRIMA OLIVIA」の最大の特徴は、車両デザインと空間演出にある。定期観光バスでありながら、従来のパッケージツアー型バスとも異なり、上質で静か、そして穏やかな移動体験を提供している。

 

車両デザインを手がけたのは、鉄道デザインの第一人者である水戸岡鋭治氏。JR九州の豪華列車「ななつ星」や、北海道を走る「THE ROYAL EXPRESS」など、日本を代表する観光列車の車両デザインを数多く手がけてきた巨匠である。

 

水戸岡氏は岡山県生まれ。地元の工業高校インテリア科を卒業後、デザイナーとしての道を歩み、鉄道デザインの第一人者となった。「YUI PRIMA OLIVIA」は、そんな同氏にとって、地元ゆかりの瀬戸内を走る特別なプロジェクトといえる。

瀬戸内ブルーの上質感ある車体 車両価格1億円以上

車体は、瀬戸内の海をイメージした淡いブルーで塗装されており、静かに輝くその姿は、風景に溶け込みながらも存在感を放っている。街中に停車すれば、自然と歩行者の視線を集めるような、上品なたたずまいが印象的だ。

神姫バス「YUI PRIMA OLIVIA」車体
瀬戸内をイメージした淡いブルーの「YUI PRIMA OLIVIA」
神姫バス「YUI PRIMA OLIVIA」

 

何より注目すべきは1台あたり1億円超の車両価格。一般的な観光バスの3〜4倍にあたる投資額からも、「YUI PRIMA OLIVIA」が単なる移動手段の域を超えた体験を提供するために設計されたことがうかがえる。なお、神姫バスは、このプロジェクトのために2台の車両を導入している。

鉄道ラウンジカーのような空間にバーカウンターも

車内は、木材を多用したしつらえと柔らかな間接照明、他に乗客がいても静けさが保たれる落ちついた空感だ。鉄道のラウンジカーを思わせるような内装は、単なる移動手段としてではなく、「そこに滞在する価値」を感じさせる。

 

記者はかつてJR北海道で運行されている「THE ROYAL EXPRESS」に試乗したことがあるが、車内に漂う包容力において、共通するものを感じた。

 

座席は全25席。一般的な大型バスが40席超を備えるのに対し、ぜいたくな空間設計だ。進行方向右側に1人掛け、左側に2人掛けの座席を配置し、シートの間隔にも余裕があり、落ち着いて過ごせる。

神姫バス「YUI PRIMA OLIVIA」車内
鉄道サロンカーのような装飾の車内(写真:神姫バス提供)

 

さらに、車両最後方にはコンパクトながら本格的なバーカウンターが設置されている。無論、化粧室とWIFIも完備されており、日本一長い定期観光バスに対応する快適な設備が整っている。

神姫バス「YUI PRIMA OLIVIA」バーカウンター
最後方のバーカウンター(乗客は自席でドリンクを受け取る)(写真:神姫バス提供)

姫路から倉敷へ―静けさと開放感に満ちた「陸のクルーズ」

記者が体験したのは、全部で8つの路線が用意されている中から、【姫路発→倉敷/宇野港着】世界遺産姫路城・倉敷散策 <歴史と暮らしを巡る>の一部をめぐるメディア向けの試乗ツアー。兵庫・姫路駅から岡山・倉敷までの区間を往復するコースで、「YUI PRIMA OLIVIA」の空間そのものの魅力を確かめることが目的だ。

 

出発後まもなく、車は山陽自動車道へ。まだ豪華な車内になじみきれないまま、意識的に車窓を眺めたり、座席のしつらえを確認したりしていると、同乗のアテンダントが現れ、ドリンクのオーダーを丁寧に尋ねてくれた。
車内はフリードリンク制で、バーカウンターから届けられたのは、瀬戸内の地酒やソフトドリンクなど。手元にグラスが届くと、それまでの軽い緊張がふっとほどけ、穏やかな時間が流れ始めた。

 

座席や周辺の意匠は丁寧に仕上げられている。神姫バス関係者によれば、「九州新幹線の座席デザインをモチーフにしている」とのことだ。

神姫バス「YUI PRIMA OLIVIA」バーカウンター
立ち上がりやすい適度なリクライニング機能を備えたシート(写真:神姫バス提供)

 

やがて、大きな窓から見える山あいの風景や田園が広がり、まるで一幅の絵画のように流れていく。「陸のクルーズ」という表現も納得できる。

 

バスの乗り心地は快適で安定感がある。隣席とのほどよい距離、やさしく体を包み込むような座面も心地よく、一般的な観光バスにありがちな窮屈さや騒がしさもない。「YUI PRIMA OLIVIA」で過ごす時間は、単なる移動ではなく、「風景とともに過ごす豊かな空間」となった。車内に流れる穏やかなリズムは、いつの間にか同乗者全体で共有されていたように思う。

 

途中、アテンダントがさりげなくドリンクの気配りをしてくれた場面も印象に残っている。さらに、瀬戸内にちなんだアメニティーが手渡され、旅の記憶に残る贈りものとなった。

YUI PRIMA OLIVIAアメニティー
アメニティー(地域産のハンカチ、リップクリーム、ハンドスプレー)(写真:神姫バス提供)

ゆったりしたバスと倉敷のにぎわい-コントラストが生むバス旅のリズム

今回の終着地・倉敷では、地元ガイドによるツアーが用意されていた。白壁の街並みが残る美観地区で、大原美術館の外観や、町家を改装したショップやカフェなどをめぐった。

倉敷美観地区
倉敷美観地区(夏のイメージ)

個人的には倉敷は今回初訪問だったが、「YUI PRIMA OLIVIA」による上質なバス旅のなかで、ちょうどよいアクセントになった。

 

美観地区は平日でも、多くの外国人観光客でにぎわっていた。関係者によれば、週末には日本人観光客が加わり、さらに人出が増すという。約1時間と程よい長さのガイドツアーで街の活気に触れていると、自然とバスに戻って、自席でゆったり過ごしたくなっていた。

 

静かな丘のクルーズと、観光地のにぎわいのコントラストがもたらすリズムもまた、このプログラムの魅力のひとつなのだろう。

途中離脱せず、「姫路駅」へ戻る

美観地区の散策後は、現地での離脱も選べたが、迷うことなく再び「YUI PRIMA OLIVIA」に乗り込み、姫路駅まで戻ることにした。ふだん記者は、公式取材を終えると旅の一団から離れ、自由行動することが多い。

 

しかし今回は、迷わずバスで帰る選択をした。往路では、車窓や内装に目を配りながら過ごしていたが、復路は観光後の適度な疲労を感じ、ゆったりしたシートに身を委ね、ほとんどの時間を眠って過ごした。これもまた、「YUI PRIMA OLIVIA」が提供する価値のひとつだ。

今回のルートのイメージ動画【姫路発→倉敷/宇野港着】世界遺産姫路城・倉敷散策 <歴史と暮らしを巡る>

瀬戸内をつなぐ、8つのルート

「YUI PRIMA OLIVIA」は現在、瀬戸内の主要都市や港町を結ぶ8つの定期観光ルートで運行されている。神戸・姫路・倉敷・宇野港・高松・松山・今治・宮島・尾道など、鉄道やフェリーでは移動しづらい地点を橋渡しするようにつなぎ、瀬戸内地域全体を周遊する構成となっている。観光列車やクルーズ船とも異なる「陸の横断」という移動スタイルにより、地域ごとの風景や文化を連続的に体験する。

2通りの楽しみ方―「全ルート周遊型」か「特定ルート型」か?

「YUI PRIMA OLIVIA」の旅には、2つの利用スタイルがある。
ひとつは、火曜から日曜までの6日間で、ルート1~8すべてを網羅しながら瀬戸内地域全体をめぐる「全ルート周遊型」。前半3日間(火曜~木曜)で神戸から西へ進み、後半3日間(金曜~日曜 ※一部月曜含む)で広島方面から東へと戻る構成となっている。

 

所要日数と費用の面ではかなりハードルがあるものの、そのぶん瀬戸内地域との関係性が深まり、単なる観光の枠を超えた体験価値を得られる旅になるだろう。

 

もうひとつは、関心のある地点やテーマに絞って特定のルートを選び、通常の旅にひと工夫加えるようなかたちで乗車する「単ルート型」。限られた時間の中で、ラグジュアリーな移動体験を取り入れるものだ。

各ルートの概要

「YUI PRIMA OLIVIA」は、瀬戸内の主要都市や港町を結ぶ全8ルートで構成されており、ルートごとに異なるテーマや立ち寄り先が設定されている。各ルートは曜日ごとに運行され、出発地から目的地へとつながるよう設計されている。

「YUI PRIMA OLIVIA」周遊ルート地図
「YUI PRIMA OLIVIA」瀬戸内地域周遊ルート(写真:神姫バス提供)

 

各ルートは、すべて当日中に完結する運行スケジュールとなっている。宿泊を希望する場合は、乗車前後の宿泊先を参加者自身が手配する必要がある。

 

一方で最近、旅行会社により「YUI PRIMA OLIVIA」を活用した宿泊・観光付きのパッケージツアー商品(募集型企画商品)を販売されている。たとえば、株式会社OUGIによる瀬戸内国際芸術祭をめぐる日帰りツアーや、志摩観光ホテルとの連携した宿泊付き特別プランなどがある。

乗車料金とキャンペーン価格

「YUI PRIMA OLIVIA」の乗車料金は全ルート共通で、1ルートあたり1人63,000円(税込)。この料金には、車内で提供されるフリードリンクやアメニティー、各地でのガイド付きツアーや体験プログラムの参加費などが含まれている。

 

価格設定から見ても、主な利用者層は時間と資金に余裕のある日本人富裕層や訪日外国人旅行者と考えられる。コストを抑えながら純粋に旅を楽しみたい個人旅行者にとっては、手が届きにくい水準だ。

 

とはいえ、記念日や節目の旅行、大切な人への贈りものなど、特別な動機がある場合には、非日常を演出する手段として有力な選択肢になりえる。

 

そんななか、朗報がある。「YUI PRIMA OLIVIA」は2025年春に運行を開始したばかりで、神姫バスにとしてもブランドの認知向上と体験者の創出に力を入れている時期だ。

 

その一環として、現在2025年9月末までの期間限定で、通常63,000円の乗車料金が特別価格30,000円で提供されている。このキャンペーン料金を活用すれば、仮に6日間で全ルートに乗車した場合でも総額は24万円。通常価格50万4,000円と比べて大幅に抑えられる。なお、このキャンペーン料金は日本在住者を対象としている。

 

「YUI PRIMA OLIVIA」の予約は、神姫バス専用予約サイトまたは予約センター(TEL:078-271-8019)にて受け付けている。予約は乗車希望日の1週間前まで。

 

※この記事は、神姫バスが主催する「プレスツアー」に参加して執筆しました。