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飛騨市が広葉樹のまちづくり(後編)|「飛騨産直市そやな」内覧会へ

2日目朝、「飛騨産直市そやな」に向かった。今回のメインであり気分もあがる。施設は古川の中心街から車で5分ほどの「道の駅アルプ飛騨古川」の構内にある。

飛騨産直市そやな

 建物は木造平屋。外壁は濃い茶褐色に染められた木材で囲われている。屋根の鼻隠しと差さえ棒はシンプルな角材。奇をてらわず落ち着いたデザインだ。見る側も落ち着く。

 

 そもそも、「飛騨産直市そやな」はなぜ建てられたのか。
 飛騨市には(旧)農産直売所があり6月まで営業していた。それを引継ぐと言う。

 

 理由は(旧)農産直売所の老朽化。築年数が半世紀以上と古く室内温度の調整が効かずお客やスタッフはもちろん、農産物にも良くなかった。そんな時、道の駅構内に建築用地を確保できて、プロジェクトがスタートした。コンセプトに広葉樹が取入れられたのは必然だった。

 

 竣工式で都竹市長は、「飛騨市の広葉樹の豊かな森から生まれるミネラルたっぷりの水に育てられた農産物を届けたい。」と話した。短いコメントに全て詰まっている。

 


竣工式はテキパキ執り行われた
飛騨産直市そやな
前方には沢山の関係者と報道陣がいる

 

 いよいよ内覧会へ。入室前の入口でもう木材の香りがする。中に入るると新鮮な木材の香りが充満していた。内装は飛騨市の広葉樹で作った陳列棚や什器、カウンターが設置されている。
 

 トマト店長こと牧ケ野さんは、「定番や珍しい野菜、地元で収穫が少ない時期は、他の地域の農産物も取り揃え1年を通じて魅力ある店にしたい」「地元の人はもちろん、県内外の旅行者も訪れて欲しい」など話す。節々で農家への思いを語るのが印象的だった。

 

飛騨産直市そやな
デザイナーが動きまわって建築の細部について説明する
飛騨産直市そやな
運営・商品展開を説明するトマト店長

 

それでは店内を見てみよう。

飛騨産直市そやな
農家から持ち込まれた採れたて野菜が盛り沢山
飛騨産直市そやな
野菜が並ぶところには必ず小径木の什器も並ぶ
飛騨産直市そやな
地酒や果実のジュースも充実してる
飛騨産直市そやな
小径木のレールと飛騨河合 山中和紙のライト
飛騨産直市そやな
壁に小径木の棚で作った棚が展開
飛騨産直市そやな
健康にも良さそうな広葉樹のクラフト

奥に薬草のえごまx五平餅のコーナーがある。いずれも特産品だ。
飛騨産直市そやな
えごまアイスクリーム(350円)

 

 一通り見学して施設を後にした。
 想像以上に広葉樹の小径木がふんだんに使用されていた。山菜や野菜など種類も量も豊富で価格も手頃だ。旅の終わりにお土産を買いこむ人にはやりがいのある施設だろう。なお、店の一押し商品は毎日Facebookで発信している。

 

 東京から地方に来ると国内の食料自給率が低いことを疑うことがある。旅行者は産地品を扱う店を訪れるからそう思う。実際は地方も郊外の大型スーパーには海外の商品が並んでいる。「そやな」が目指している、旅行者はお土産を買いに、地元の人は普段使いする。そのような店が各地に展開されたら、食料自給率は多少なりとも改善するだろう。

 

飛騨の森からもう一つの贈りもの「薬草」

 滞在中、広葉樹の取組みの他、薬草で市民の健康増進に薬草を取入れているということを聞いた。「飛騨市薬草ビレッジ構想推進プロジェクト」と言うらしい。古川に観光客も薬草体験ができるという施設があるというので行ってみた。

 

 「ひだ森のめぐみ」は「FabCafeHida」の直ぐそばにある。飛騨の森林で摘んだ薬草茶や雑貨販売、薬草ワークショップを提案している。摘んできた薬草を持ち込むと乾燥や粉末に加工してくれるサービスもある。

 

ひだ森のめぐみ

 

ひだ森のめぐみ|薬草パウダーで七味づくり体験

 今回、「薬草七味づくり」を体験した。席に座ると目の前に16種類の薬草パウダー入りの瓶と七味を作るための瓶が置いてある。まず、各薬草の説明を聞いて目星をつける。その後、7種類の薬草パウダーをマイボトルに少しずつ入れて七味を完成させる。味の組合せも説明していた気がするが、結局、疲労回復や安眠などに良さそうな薬草で調合した。一緒に参加した男性陣もそうだろう。

 

 完成した七味の味はやや山椒風味が強くなった。山椒を多目に入れると誤魔化しが効くと講師が何度か囁いていた気がした。

 

ひだ森のめぐみ
中央が体験スペース
ひだ森のめぐみ
周囲の棚に乾燥した薬草が並ぶ
ひだ森のめぐみの薬草
16種類の薬草パウダー
ひだ森のめぐみの七味づくり
詰めたての状態。瓶を振り混ぜ合わす

 

 七味づくり以外、「薬草コケ玉づくり」「薬草入浴剤づくり」など計7つのワークショップが体験できる。費用は500円か1,000円、時間はほとんど15分、最長60分。事前予約不要(一部除き)。気軽にディープな薬草の世界を体験できる。スタッフの薬草の知識は半端ないから、あれこれ聞いてみよう。

 

薬草料理カフェ「OHAKO」|薬草料理が少しずつ食べれるランチプレート

 2日目の昼食で訪れたのが薬草レストラン「蕪水亭OHAKO」。赤いポストと洋館レロトな建物。

 

薬草料理カフェ「OHAKO」

 

 店内は観光客も地元の人もいて賑わっている。メニューは薬草料理と飛騨産そば粉の手打ち蕎麦を提供している。一番人気の「薬草ランチプレート」(980円)を注文。薬草料理を少しずつ試すように食べられる。味は緑黄色野菜よりあっさりして食べやすい。

 

薬草料理カフェ「OHAKO」
お洒落アンティークという感じ
薬草料理カフェ「OHAKO」
薬草料理が少しずつ(仕入れ変動)

 

飛騨市薬草ビレッジ構想推進プロジェクト

 薬草を体験できる場所を2か所紹介したが、飛騨市がなぜ薬草なのかを説明したい。

 

 飛騨市は健康寿命が課題化される中、薬草に目を付けた。飛騨市の野山には245種の有用植物が自生し、古くから里山の人たちは生活に薬草を取入れて薬効を享受してきた。薬草にはミネラルが野菜以上に含まれている。

 

 取組みは早くて旧古川町の頃(2004年以前)から薬草の啓発活動をスタート。2016年、「飛騨市薬草ビレッジ構想推進プロジェクト」を立ち上げた。コンセプトは「野山は薬箱」。2019年、薬草体験施設「ひだ森のめぐみ」をオープン。現在、市は薬草商品を扱う事業者向けに商品登録制度を作り、観光客向けには「飛騨市 薬草まちめぐり」をPRしている。

 

森の人

 総面積9割が森林の飛騨市は、「広葉樹」や「薬草」という森にある自然資本を生かしてまちづくりに取り組んでいる。現在の日本は3都市圏以外、「総・地方創生」の状態とも言えるだろう。それに対して、漠然と何か新しいツールを導入するのが良いという風潮もある。飛騨市はそのようなノリとは、一線を画している気がした。

 

 滞在中、広葉樹や山の話ばかり聞いてきて最後の方は、目の前の飛騨人が「森の人」に見えてきた。間違いではないだろう。

 

 今回、観光客が広葉樹と薬草に触れられる施設を紹介した。
 飛騨古川には白壁土蔵はもちろん、まつり会館、蔵元巡り、組紐体験、飛騨牛、地ビールなどの観光スポットが凝縮している。里山ハイキングや登山、車を使うなどすれば本物の自然体験も楽しめる。

 

 これまで何度か来ている飛騨古川だが、次は真冬に訪れてみたい。

 

飛騨古川 白壁土蔵の雪の季節
(C)飛騨市観光協会

 

おすすめスポット

 2日目の朝、ホテルから歩いて十数分の「気多若宮神社」を訪ねた。2016年に公開されたアニメ映画「君の名は。」のモデルとされる神社としても知られている。まず、向かう途中の参道の景色が素敵だった。

 

飛騨古川の気多若宮神社
ストレートに続く参道がかっこいい
飛騨古川の気多若宮神社
森からの小川の水をたたえた水田

 

 神社は参道の石段を登りきったところ。石段を上る途中、飛騨の街を一望する場所があった。「この景色、凄くいい」思わず口に出た。是非、立ち寄って欲しい。時間は早朝か夕方が良いだろう。

 

飛騨古川の気多若宮神社

飛騨古川の気多若宮神社
飛騨古川の気多若宮神社

 

 今回の宿泊は「飛騨ともえホテル」。場所は飛騨古川駅前から1分。朝食の飛騨産コシヒカリはツヤツヤで美味かった。

 

 取材協力:飛騨市まちづくり観光課

 

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