大阪万博の主催者である万博協会の会長、十倉雅和氏(73歳)が会長を務める総合化学メーカーの住友化学は、2024年5月30日に2023年度の赤字が3,120億円に達すると発表しました。
今回、住友化学が発表した赤字額は3,120億円で、今年2月に公表された初期予測の2,450億円からさらに670億円増加しました。これは1915年に営業を開始して以来、同社にとって最大の赤字額です。同社の岩田社長は3月30日の経営戦略説明会で、事業再構築、在庫削減、選択的投資、資産売却などの経営計画を発表し、2024年度中のV字回復を目指すことを説明しました。
さらに、全従業員4万人のうち4,000人を削減するリストラを実施。経営陣については、会長・社長と横串し機能を担う人材を執行役員から選出することにより、経営基盤が強化されると説明されました。なお、岩田社長からは業績悪化について、「危機的状況」との認識は示されましたが、戸倉会長ならびに社長自身の経営責任を問う処分は発表されませんでした。
なお、4,000人の削減については、経営戦略説明資料の抜本的構造改革(再興戦略)セクションの最後に最低限の情報が掲載されていました。一方、人員削減については複数の大手マスコミが見出しで取り上げ、社会の関心の高さが示唆されます。編集部が5月1日、情報開示の姿勢やマスコミ報道について、住友化学の広報部責任者に質問をすると、「資料と説明会で詳しく説明しています」と回答しました。
住友化学の十倉会長は経団連会長でもあり、万博協会の会長も務めています。大阪万博の予算膨張と能登半島地震の発生により、万博反対世論が高まる中、「350億円のリングを実現したい」と述べ、「万博と能登復興を同時に進めるべき」と発言した際、合意形成よりも、反対世論をあおるような強気なトーンが特徴的です。
住友化学の業績低迷を受け、ネットでは「これでも経団連会長が務まるのか」「万博運営が務まるのか」などの論調で、戸倉会長の経営能力を疑問視する声も上がっています。3月末に起きた吉村大阪府知事の不適切発言同様に、万博開催の機運の腰を折る可能性があります。
なお、万博機運醸成活動には、40億円以上の公共予算がつぎ込まれています。編集部が、業績不振と十倉会長が関わる大阪万博、ネット上の評判について住友化学の広報に質問をすると、「当社と万博は別の話し、万博のことは協会に聞いてほしいと」と回答しました。
大阪万博で「住友館」を展開する住友化学と住友ファーマは、4月10日に両社の従業員が参加する万博開幕1年前の機運醸成イベントを開催しました。住友グループ広報委員会は、イベントでは万博マスコットが登場し、参加者が大盛り上がりし会場を沸かせたと報告しています。