万博協会は2024年9月4日、大阪万博の好感度向上を目指すメディアプラン業務において、電通を契約候補者として選定したと発表しました。電通は今年2月の入札参加復帰後、大阪万博への関与を深めています。(写真:汐留電通本社ビル)
メディアプラン業務の企画競争には、電通のほか、ADKマーケティング・ソリューションズ、大広、東急エージェンシー、博報堂、読売広告社の広告業界売り上げトップ10位のうち6社が参加しました。電通が契約候補者に選定された理由は、マスメディアの予算配分や広告枠以外の露出獲得、既存の電通受託事業とのシナジーが評価されました。なお、電通の提案金額は上限6億円に対し5億9,981,003円でした。
電通は2024年2月に入札停止から復帰し、4月以降、大阪万博の機運醸成に関わるさまざまな業務を次々と受託しています。①協賛募集、②開会式、③チケット販売促進、④半年前イベント、⑤メディアセンター運営、今回の⑥メディアプランなどの業務を受託し、合計で約42億3千万円(編集部調査)の予算を獲得し、さらに、協賛者募集の実績に応じた手数料収入が見込まれます。
この結果、2024年度上半期において、大阪万博の事前および会期中の機運醸成関連業務が「電通案件」として加速しています。他の大手広告代理店による大阪万博事業の受託実績はほとんど見られず、昨年度に入札参加が禁止されていた企業が大多数であるため、電通以外の大手広告代理店にとって、大阪万博は利益を得られる公共事業とはなっていない状況です。
2024年5月30日に万博協賛社でもある三菱総合研究所が発表した最新の意識調査では、依然として機運の低さが課題であることが明らかになりました。前回調査(2023年12月発表)と比較して、関心度は27.4%から25.6%に低下し、来場意向も26.9%から27%でほぼ横ばいでした。この結果からは、機運醸成活動が効果を上げていないことが示されています。
なお、これらの意識調査は2023年度下半期に実施されたもので、電通が大阪万博の業務に復帰した2024年度以降の意識調査結果はまだ公表されていません。
公共事業受託による電通の責務-機運醸成を果たせるか?
昨今、SNS上では東京五輪の不正問題や都庁プロジェクションマッピング疑惑を受け、電通が関わる「電通案件」に対して厳しい視線が注がれています。大阪万博で電通の関与が深まるにつれ、「電通案件」として認知される一方で、万博運営の透明性や公正性に対する懸念が高まる可能性があります。
電通の入札復帰以前に、国から約40億円以上の機運醸成予算が投じられたにもかかわらず、大阪万博の機運は一向に盛り上がらず、予算が「砂漠に撒かれている」ような状況です。公共予算が投じられている以上、予算に見合う成果が求められます。今後、電通が自らの信頼を回復し、機運醸成を果たせるか注目されます。