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【地元から通信】「農林漁業と田舎暮らし」アナログな暮らしを体験する農泊(長崎県西海市)

シリーズ第4回「よい旅⇌地元から通信」です。今回は長崎県 西海市ふるさと資源推進課で農泊事業を担当する宮原さんから寄稿が届きました。西海市とのめぐりあいは昨年同市の丼フェアをニュースに取り上げて。丼のうまいところには釣り場あり。西海市はリアス式海岸の魚釣りのパラダイス。釣り好き記者に興味深い場所です。
文章からは筆者の強い思いが伝わってきます。それでも掲載前、その気持ちを少々抑えたくらいです(笑)。農泊に興味がある人はもちろん。今、都会に住んでいるけれど、ふるさとが気になる人に読んでほしい言葉がちりばめられています(編集部)。

長崎県西海市は、その名の通り、日本本土の最西端に近く大村湾、五島灘、佐世保湾、三方の海に囲まれています。長崎県の2大都市である長崎市と佐世保市のちょうど中間に位置する田舎の町です。
今回、西海市の暮らしを満喫する「農林漁業体験民泊(農泊)」についてご紹介します。また、私が農泊の仕事を通じて世界観が変わった経験と、農泊への期待について綴りたいと思います。

長崎県西海市

農林漁業体験民泊(農泊)について

農泊は旅行者がその土地の一般家庭に宿泊し、昔ながら引き継がれる農業、漁業、林業などの生活や文化を体験するという新しいスタイルの民泊です。
西海市は三方の海と、陸には山々が連なり、自然がいっぱいなので漁業や農業を生業としている住民が多い町です。

 

“暮らすように旅をする”・・農泊はこの地で営まれてきた豊かな暮らしを楽しみます。
畑で野菜を採ってきたり、おかずの魚を釣ったり、滞在先の人と料理をして食卓を囲む、初めてだけれどあたたかくて懐かしい。ホテルで味わうことのできない「旅のカタチ」です。

長崎県西海市
長崎県西海市

 

懐かしくて、あたたかくて、自然の学びを満喫できる「農泊」

西海市では現在40軒以上の農泊家庭が旅行者を受け入れています。各家庭は家業や趣味、特技を生かそうと、民泊受け入れの呼びかけに手を挙げてくれました。
ここには食事のおかずを買いにスーパーへ・・ではなく、山へ、海へ、畑へ。お買い物に出かけるような感覚で、「ちょっとそこまで・・」と、食材の調達に行く人たちがいます。

 

「釣る」や「採る」、さらには「耕す」ような身近な暮らしがあります。都会の人からは、「買い物する場所がない」「遊ぶところがない」など、不便な暮らしと思われるかもしれません。
しかし、この暮らしこそが、私たちが大切にし、伝えたい自給自足的な暮らしです。農泊は観光資源としてだけではなく、豊かな自然と田舎の空気にあまり触れたことのない都会育ちの子どもにとって、自然からさまざまなことが学べます。

 

西海市が本気で農泊に取り組む理由

私たちは農泊で地域を体験してもらうためだけではなく、観光と移住の間でつながる「関係人口」を増やしたいと考えています。
西海市は現在、修学旅行を受け入れています。子どもたちが西海市との関わりを持つきっかけにしてほしい。1度きりの観光で終わらず、離れた場所にいても西海市の存在を感じてもらえるようなご縁をつなぎ留めてくれたらと思います。

 

ある時、都会から農泊にやってきた修学旅行生の入村式に立ち合いました。生徒の顔は、「自分はここにいったい何をしに来たのだろうか」というような表情がほとんどでした。入村式の後、生徒たちは見知らぬ家庭でそれぞれの時間を過ごします。

 

離村式の日、農泊を終えた生徒たちが同じ場所に戻って来ます。
農泊先の車から満面の笑みを浮かべて降りてくる生徒たち。翌日、友人との再会のとたんそれぞれの体験自慢がはじまります。
「薪割りしてBBQした !」「海で釣りをしたよ !」「私なんかみかん狩りしてスイーツをつくった !」・・・話が止まりません。田舎で当たり前の生活でも、都会の生徒たちにとっては貴重な体験なのでしょう。

 

さらに感動を覚えるのは、家庭のお父さん、お母さんとの別れの際、涙を流し泣きじゃくる生徒がいることです。ほんの数日でも一緒に生活した時間が、生徒たちにとってかけがえのない思い出になっているのです。
これだけ感情があふれるような感動が生まれる光景を目のあたりにし、西海市の素晴らしさを確認します。いつも私たちは生徒の姿から学び、あたたかい気持ちになります。

 

農泊家庭の主は、「民泊で自然とともに生活する西海市を知ってほしい」「宿泊した人が帰って来たくなるような居心地の良い場所でありたい」と言い、いつでも旅行者を歓迎してくれます。

長崎県西海市 農泊
長崎県西海市の農泊

 

これから、この旅行での出会いをきっかけに、農泊に訪れた人が、西海ファンとなり、そこから新たなきっかけが生まれ、「これからも西海市と関わりを持ちたい」と距離に関わらず、地域とつながりを持つ人を増やしてゆきたい。その中から将来、西海市で暮らしはじめる人が出てくることを願っています。
西海市の農泊はそのきっかけになりえる内容だと自信を持っていえます。

 

西海市の農泊で楽しめる豊富な体験メニュー

西海市は山と海に囲まれた自然豊かな町です。
「西海の農業漁業を知りたい」「地域の人と交流をしたい」「自然を満喫したい」など、西海暮らしならではの体験。釣りやカヤック、SUPなどのマリンアクティビティや体験、貝殻やシーグラスを使ったものづくり体験。押し寿司・かんころ餅などの郷土料理づくりなど、体験メニューが豊富です。

長崎県西海市の農泊
長崎県西海市 農泊

 

ほかにも、美味しいみかんをもいで食べる、大きな大根を二人がかりで引っこ抜く、火をおこす・・・。まだまだ伝えきれません(笑)。手触り感があり、ひと昔前までは当たり前だった「何か懐かしい暮らし」をぜひ体験してください。

 

西海市の農林漁業体験民泊(農泊)の利用について

西海市では農業、漁業の体験をはじめ、海・川遊び・郷土料理づくり、ピザ焼き、木工・工芸などの体験ができる農泊を受け付けています。参加費(1名)は大人7000円~9000円、小学生・未就学児・乳幼児は都度決定。参加費には夕朝食・体験・保険が含まれています。価格帯は体験内容等により異なります。
受け付けは「一般社団法人山と海のさいかい」まで。

 

終わりに

長崎県西海市 農泊

 

私は西海生まれ西海育ち。高校・大学で地元を離れ、就職と同時に西海市へ帰ってきました。小さいころは海で泳いだり、石を投げたり。山で秘密基地をつくったり、木の実を採ったり、木登りしたりしていました。
これが当たり前で、昔はその良さにも気付かず生活をしていました。しかし、地元を離れてようやくその魅力に気付きました。
西海では隣のおじちゃんが釣った魚を持ってきてくれる、おばちゃんがあまった野菜や米をわけてくれる。こんな日常ってとても贅沢な暮らしだと思います。

長崎県西海市 農泊

 

西海市は、バスも数本、電車は走っていない。公共交通機関も充実していません。
だからこそゆったりとした贅沢な時間が流れています。
田舎だけれど豊かに過ごせる環境で、ドライブしながら水平線に沈む夕陽を眺め、夏は子どもと海や川へ。冬は焚き火に芋を放り込む。お腹いっぱい新鮮な空気を吸う。衣食住、そして人。すべてにおいて充実した町であり、そんな田舎のあたたかい暮らしが、新たな出会いと感動を創り出します。
「暮らすように旅をする。」
西海市の新しい旅のカタチをぜひ体験してください。

 

文章:宮原 大輔(西海市ふるさと資源推進課)

西海市で生まれ育ち、小学生のころからソフトボール、野球に熱中。高校から県内のほかの町に住み、大学は大分県へ。西海市役所へ就職したことから帰郷する。帰郷から数年間は「何もない西海市」と思い込んでいたが、観光関係の業務に携わることで田舎の魅力に気付きはじめる。現在、農泊など西海市の魅力発信や公園等の管理を担当。
西海市のおススメグルメは「西海シマアジ旨造り膳」。刺身、煮付け、フライなど8種の品が楽しめます。

 

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