北陸観光は、令和6年能登半島地震からの復興と、3月予定の北陸新幹線敦賀延伸という2重の課題に直面している。この状況において、旅行業界は先見の明を持った新たな観光ビジョンの提示が求められる。
能登半島は年間約770万人の旅行者が訪れる北陸観光の重要な地域であるが、今回の地震で大打撃を受けた。一方で、北陸新幹線敦賀延伸のお祝いムードが高まっていた。しかし、敦賀延伸により「能登半島」と結ばれる「金沢駅」より先の地域が新たな目的地となり、「能登半島」への旅行者数減少が懸念されていた。地震発生により旅行業界は新たな対応を求められている。
旅行業界は、北陸新幹線敦賀延伸に目を向けつつも、能登復興に対する社会的責任を果たすべきだ。特に大手旅行業者は、2015年の北陸新幹線金沢駅開業により、能登半島で多くの利益を得てきた。また、コロナ禍、公共事業の支援を受けて事業が継続できた。現在、旅行業が復活し増収増益が続く中、能登への多大な援助が期待される。
能登の復興と北陸新幹線敦賀延伸を両立させることが必要だ。能登の一部地域の旅行を徐々に回復させるための宿泊施設や観光施設の修繕援助、被災地ボランティア受け入れ施策などが求められる。北陸新幹線新駅と能登を結ぶプランやキャンペーンの策定も必要だ。旅行業者は被災と新幹線沿線の行政とのネットワークを活かして、広域連携の調整役も担える。優秀な頭脳とネットワークを持つ旅行会社は、さまざまな施策が考えられる。
必要な資金は、コロナ禍の公共事業の受託金額分や旅行業の増収、北陸新幹線敦賀延伸特需を能登支援に充てられる。ただし、今回は国の復興予算目当ては許されない。この場面で不正が行われると、支援の範囲に影響を及ぼす。特にコロナ禍、不正を行った業者には奉仕の精神が求められ、それが不正の再発防止につながる。また、支援内容は事業内容そのものであり、各社が取り組むSDGs目標に設定し、内製化ができる。
地震発生から日が経つが、旅行業界のリーダーとされる人物たちから、能登支援を表明する力強いメッセージはまだ出ていない。北陸新幹線敦賀延伸が迫る中、能登半島地震からの復興と開業を両立させた観光ビジョンの提示が求められている。これは、旅行業界のあり方が問われる課題であり、その成果が北陸地域の未来を大きく左右する。
※2024年1月6日、全国旅行業協会(ANTA)で会長を務める二階俊博自民党元幹事長(84歳)が、政治資金疑惑で東京地検特捜部による事情聴取を受けことが報じられた。この事態について協会役員は何を思うのか。 |