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【レポ(後編)】地域の絆が作品となる古川祭(4/19・20)

4月20日、飛騨古川祭の2日目はいっきに初夏を思わせる暖かな好天になった。昨晩、動の「起し太鼓」に熱狂した翌日、静の「屋台行列」を見て分かってきたのは…。

飛騨古川祭

2日目は近郊散策からスタート

(前編+)翌朝、10時頃に古川の町に戻ってくると、昨日の体験から地元感が増していた。2日目の始まりは飛騨市まちづくり観光課の石原さんがアテンドしてくれて、隣町の貴船神社の例祭で行われる子ども金蔵獅子(きんぞうじし)を見に行った。古川の中心地から少し離れた見晴らしがよい交差点で、小学生が獅子舞を踊っている。踊りが終わるまで30分ほどいたが、周りを家族やご近所さんが見守っていて、あたたかい雰囲気が心地よかった。

飛騨古川
彼らの後ろは笛の吹き手、手前は家族やご近所さんが取り囲む

その後、「牧成舎」という有名な牛乳屋さんに立ち寄り、久しぶりにソフトクリームをいただいた。アイスクリームは1年に1回食べるかどうか位なので、考えても濃厚でおいしいとしか表現できなかったが、同行の2人が「うぅーん、おいしいぃ」と喜んでいてよかった。

飛騨古川の牛乳屋さん牧成舎
店と工場はのんびりした川沿いにある|飛騨古川駅から徒歩7・8分

 

次に、昨夏取材した「飛騨産直そやな」横の道の駅アルプ飛騨古川に4月22 日オープンする「寄合所耕 飛騨古川食堂」で早めのランチをいただいた。オープン前だが看板メニューの飛騨郷土料理「けいちゃん・とんちゃん」を試食させていただいた。少し前に孤独のグルメで「けいちゃん・とんちゃん」を見ていて食べたかった。特製タレに漬け込まれたお肉が絶妙でごはんが進む。思い出すと食べたくなるやつだ。

飛騨古川食堂
店内の白いクロスが黄ばむと名店の仲間入り!?
飛騨古川食堂 けいちゃん とんちゃん
鶏肉のけいちゃん・牛肉のとんちゃんのコンビ

祭りの終わりは始まり?

「けいちゃん・とんちゃん」でおなかが満たされたが、2日目まだ見ていない屋台や行列のことが気になり始めた。昨日を思い出しつつ、祭りもあと数時間で終わると思うと、寂しさもある。地元の人ならもっと寂しいはず。石原さんに、「あと少しで祭が終わるのって、寂しくなりませんか?」と聞くと、「それはないです!」「祭りが終わると飛騨に春本番が来て、来年の祭りが始まるのです!」と満面の笑みで答える。意外な返事だったがそれを理解し、「古川って1年中、祭りとともにあるように聞こえますよ」と返すと、「地元の人はそうだと思う!」と答えた。他の人は、「いい祭りやった」と余韻に浸りながら、「来年が楽しみだ」と言う。旅行者は、衝撃だった起し太鼓の余韻が残る中、今日は祭りも旅も終える。一方、地元の人たちは、祭りが終わると祭りが始まるという感覚があるようだ。

さまざまな演芸が楽しい曳き揃え

午後、古川の町中に戻ると、絢爛豪華な屋台が並び演芸が行われ、各所にぎわっている。それぞれの群衆に近づくと、からくり奉納や子どもたちの笛に合わせて舞う獅子舞が繰り広げられている。ひときわ訪日観光客を夢中にさせていた子供歌舞伎の立ち廻りは、昨日以上に堂々としていた。

飛騨古川の荒城川(宮川支流)
夏のような日 荒城川(宮川支流)沿いの桜並木から町に入った
飛騨古川祭
通りに入ると屋台曳き揃えでさまざまな演芸が披露されている
飛騨古川
背景の山々とからくりが映えた
飛騨古川祭
それぞれの屋台の下には男衆がたむろしている

祭り期間中、どこもかしこも古川の町が活気に満ちあふれている。細い路地を進むと、群衆がいて、何かの演芸が行われていて楽しい。

 

飛騨古川祭
飛騨古川祭
こどもたちの笛が大人の獅子舞を舞い踊らせる
飛騨古川祭
今日も2人の歌舞伎に観衆が沸く

祭りも終盤に差し込む。今回の祭り見学の最後、気多若宮神社に戻ってゆく最後の行列巡行を見届けるため、まつり広場で待つことにする。広場には同じように考える観光客が集まっている。日影のない広場は夏のような日が照り暑く、缶ビールを飲みながら30分近く待つが行列が来ない。

 

広場は駅まで5分程度だが、富山駅行き列車の出発時刻はあと20分だ。遠くに行列の姿が見えたが、広場まで時間がかかりそう。そこで、行列が広場を出たあとに進む駅近くの踏切に移動し、行列を見たら駅へという案が出て、そこに移動した。行列が進んでゆく道の先には、古川の町を見下ろす「安峰山」を中心とした山々が広がっていた。この景色と行列を撮影できたら、祭りのフィナーレにふさわしい。

 

地域の絆を確認し合う古川祭

列車の出発時刻が迫る中、祭り広場を出た行列の先頭が近づいてきた。このあとやってきた行列の長さには驚いた。1kmくらいに感じた。

飛騨古川祭
広場から出た行列の先頭が見える
飛騨古川祭
行列の先頭がゆったりとお出まし 広場の観光客が列車の時間に慌てている時?

最後にこの行列を見て、これだけの人たちが古川祭に関わっているのかと驚くとともに組織力に敬服した。滞在中、何人も古川の人と話したが、祭りが重要文化財とかユネスコとか聞くより、祭りを支え合う人について聞くことが多い。
古川祭は、年1回の祭りを通じて、地域の絆の深さを確認し合う場であり、観光客はその光景を見ているのだろうか。

 

行列を歩く人たちは、出し切ったすがすがしい表情をしている。その時、踏切の警笛が鳴り始め、行列の進行が止まり、列車が横切っていった。石原さんに「これ乗るはずだった電車ですね!」と言われ、何だかおかしい。その後、しばらく行列を眺め、一礼してから駅に向かった。

飛騨古川祭
行列はまだまだ続く…
飛騨古川祭
飛騨古川祭
進んだ先に気多若宮神社がある

帰りは「下から」ルートで

富山駅経由の列車は2時間待つ必要があるが、名古屋駅経由は20分で列車が来るとのこと。初めて下から帰ることにしてみる。名古屋駅までほぼ寝て過ごし、寝ぼけ眼で東海道新幹線に乗り継ぐ。帰るまでが旅であるなら、飛騨から東京へは2時間待っても、上からがよいと痛感した。

 

車内で古川祭の初日を報じるニュースを見た。“祭りは規模を縮小して開催された”と報じていた。と言っても、初参戦した身としては、どう規模縮小なのか分からない。あれで規模縮小であれば、フルスペックの祭りはどのようなものか? 益々興味が湧いてくる。

 

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