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【旅レポ (後半)】岐阜・中山道ウォーキング体験記(中津川宿~妻籠宿)-雨の彩りで特別体験

 朝起きると雨が激しく降っていた。天気予報の通りだ。本日の予定は、「中津川駅」前を車で9時頃に出発し、「中津川宿」を通り、「落合宿」と「馬籠宿」に立ち寄り、ゴールの長野県の「妻籠宿(つまごじゅく)」を目指す15.4kmのコースだ。距離的には初日より長くなるが、本日の宿場町間の移動は車と歩きを併用する予定だ。今日は雨の分、車の移動が多くなりそうだ。

中山道、落合宿「落合の石畳」
【旅レポ (前半)】岐阜・中山道ウォーキング体験記-13.7kmの十三峠を余裕で制覇?()

2日目 岐阜県中津川市の3宿を経て長野県南木曽へ

 「中津川駅」を車で出発後、「中津川宿」の町並みを通ってゆくが、激しい雨で外の景色が見えにくい。少々走り、住宅街を抜けると、「落合の石畳」(落合宿)といわれる山道の入り口に10時頃に到着した。ここは約840mの坂道に石畳が敷き詰められ、往時の雰囲気が残る場所という。

中山道の落合宿「落合の石畳」
「落合の石畳」の入り口|どのような空間なのか?

 「落合の石畳」を歩く前は、「今日は雨だけれど車があるから…なんとかなるだろう…」と、明らかに初日のテンションにはほど遠い感じであったが、ここに来て、2日目の雨は、当たりだということが分かった。

 

 石畳の入り口から両脇に立ち並ぶ、豊かな木々の間を通る石畳の山道を歩く。どんどん前に進むと、両脇の木々と足元の雨でぬれた石畳みとその上の落ち葉に囲まれた空間が現れた。晴天日ではぜったいに見られないような幻想的な世界だった。朝訪れているのだが、時間の感覚がなくなり不思議な時を過ごした。「雨の日に来れてよかった」。石畳みを歩きながら何度もシャッターを切る。同じ空間内でありながら、高低差なのか日差しの当たり方なのか分からないが、異なる景色が広がっていた。

中山道の落合宿「落合の石畳」
歩き始めは雨にぬれた爽やかな石畳みの坂道が続く。
中山道の落合宿「落合の石畳」
石畳み沿いは天然の庭園が広がる。
中山道の落合宿「落合の石畳」
曲がり角を過ぎると霧がかかる幻想的な空間が現れる(冒頭の写真はスマホで撮影)
中山道の落合宿「落合の石畳」
街道沿いの森林と霧のコラボレーションが絵になる。

 最近、オーバーツーリズムへの対策として、行政や観光事業者は、朝や夜に時間帯をずらしたり、人気地域から分散しようとしたり取り組んでいるが、人が外出を控える「雨の日」の魅力を訴求して、人を連れ出すのもよいと思う。今風に名付けるとしたら、「レイニーツーリズム」とでもいうか。若干くすぐったいか。

 

 「落合の石畳」を登った後、待機していた車に乗って、東美濃の「中山道」では最も有名な宿場町「馬籠宿」へ向かった。「馬籠宿」は「中山道」が続く、長野県木曽路への入り口に位置している。

 

 2005年の市町村合併により長野県山口村が岐阜県中津川市に編入された。詩人の島崎藤村が生まれた地であり、「馬籠宿」にはその生家が「島崎藤村博物館」として残っていている。岐阜県は、東美濃エリアを代表する一大観光スポットを手に入れたといえる。

 

 「馬籠宿」に到着した後、最初に訪れたのは「馬籠館」だ。大きな施設で、栗きんとんや山菜、そばなど、多種多様なお土産がそろえられている。
 店内を見ていると、同行者のリーダーから声をかけられた。そこに行くと、なんと五平餅屋があった(にんまり)。その方曰く、ここの「五平餅」は県内数ある中でお勧めのひとつという。以前のバスツアーで印象が悪くなっていた「五平餅」は、昨日とこの場所での経験によって完全に忘れ去られ、すっかり五平餅ファンになっていることを確信したのだった。

馬籠宿の五平餅
馬籠宿の「五平餅」はぷるっぷるな3連団子♪で3つ付き。

 昨日と本日の「五平餅」は、どちらが上かと聞かれれば、いずれもおいしくて甲乙つけがたい。五平餅を好きになったばかりの素人なので味の識別もあいまいだ。頭の中では、都内で「五平餅」をどう展開したらよいか。修行はどうしようかなど、出店計画を練り始めていた。

 

 その後、「馬籠宿」のメインストリートの急坂を歩いた。両サイドには茶屋と土産物屋が立ち並んでいる。ここには大型バスのツアー観光客が多く、平日だったためインバウンド旅行者が目立つ。まささに観光スポットという感じだ。

 

 個人的に「馬籠宿」だけを目的に訪れることはないかもしれないが、昨日歩いた「大湫宿」から「大井宿」、今朝の「落合宿」と自然がメインのコースを歩いた後に「馬籠宿」に来たら、この観光スポット感はより楽しく思えるものだ。同じ旅行でも訪れる場所にギャップがあり、そこを行き来するからこそ、いずれものよさが分かるものだ。

中山道「馬籠宿」
「馬籠宿」のメインストリートの坂©中津川市(これは晴天時の借り写真)

 「馬籠宿」のメインストリートの坂道を上まで上がったところで、車の待機場所へ向かう。坂を上がりきったところに道があり、右手の方に何の気なしに歩いてゆくと視界が開けて、目の前に壮大な景色が広がっていた。山や木々、雲の動き、空の色まで雰囲気があり、素晴らしい。これも、雨が降ったおかげで見られた光景だろう。

馬籠宿からの景色
たまたま道を外れたら雨の中でしか現れない景色を発見した。

「馬籠宿」と「妻籠宿」の途中に現存する茶屋へ

 われわれは車に乗り、次の目的地の「一石栃立場茶屋(いちこくとちたてばちゃや)」に向かった。茶屋は、「妻籠宿」と「馬籠宿」を結ぶ街道の中間地点にある。昨日歩いた街道沿いにあった標識の茶屋跡とは異なり、ここは中山道を歩く人のための休憩所になっている。

 

 車で移動してきたわれわれは、茶屋の上の車道にある駐車場から延びる坂道を下りて茶屋に向かった。なぜここにと思える意外な場所に、大きく立派な日本家屋が建っていた。江戸時代に建てられた建物だが、まだまだ堂々としっかりとしている建築物だ。

中山道「一石栃立場茶屋」
「中山道」を歩く上では貴重な休憩場所だ。

 ちょうど長野県のテレビ局が取材に来ており、インバウンド旅行者に「あなたと一緒に歩いてよいですか」という風に誘っていて成功していた。すんなりいって若干怪しかったので、記者に聞くと、「今、声をかけてOKをもらいました」と言い返された。少々失礼な質問をしてしまったようだ。

 

 家屋の中は、募金をするとお茶が飲めるシステムが設けられており、「公益財団法人妻籠を愛する会」というボランティア団体に所属している年配者が管理者として来訪者の世話をしている。茶屋の運営は、その団体メンバーがシフトを組んで当番制で回しているそうだ。

中山道「一石栃立場茶屋」
小銭を用意、募金をしてお茶を飲もう。

 茶屋に約30分滞在した後、「妻籠宿」へと向かった。午前中に降った雨に感謝していたが、この茶屋は晴れた日にはさらに素晴らしい景色を提供してくれたことだろう。建物内部はご覧の通り、タイムスリップしたような雰囲気を感じられるのだが、気になった建物の前にある広場は晴れた日が気持ちよさそうだった。

 

 その時、「馬籠宿」方面から黒いウェアが似合うモデルのようなヨーロピアン女性が1人で勢いよく歩いてきて、茶屋に入るのを見届け、茶屋を後にした。写真で歩いてくる人は別の人。

中山道「一石栃立場茶屋」の前の道
雰囲気のある小さな「中山道」向こうが「馬籠宿」方面。

 「一石栃立場茶屋」から「妻籠宿」までは約10分で到着した。「妻籠宿」には2017年に訪れていた。当時からよく知られた場所であったが、有名な観光スポットでくくれない、作り込まれ過ぎない町の自然な雰囲気が、印象に残っていた。

 

 今回は雨の中で、「妻籠宿」を歩いた。街道に並ぶ日本家屋は古さを感じさせるが、よく手入れされており、木造建築に疲れた感じはない。雨にぬれた姿が趣を醸し出している。

 

 小さな茶屋や土産物屋の軒先からは、通行者への声かけが禁止されている。そのため、「どうぞどうぞ」「いらっしゃい」などという声は聞こえてこない。このルールが町全体のコンディションによい影響を与えているのかもしれない。

中山道「妻籠宿」
町並みの長さは約270mでほぼ一直線|団体が店に入った瞬間を狙った
中山道「妻籠宿」
街道沿いに目をやるとさまざまな撮影スポットがある。
中山道「妻籠宿」

 道を進むと待ちわびていた「あれ」があった。そう、この旅で3度目の「五平餅」を楽しむ時間がやってきたのだ。雨宿りをしながら、五平餅を買うために人が並んでいた。写真に写るインバウンド旅行者が、「日本にはこんなうまいものがあるのかと」といわんばかりの表情で、夢中で「五平餅」を食べていたのがうれしかった。確かに、この店の「五平餅」はうまかった。当日は少々肌寒かったため、焼きたての温かさが、おいしさを引き立てていた。

妻籠宿の五平餅
気持平らな2連団子で2つ付き(五平餅おもて 
妻籠宿の五平餅
店内では自家製そばを提供している。

 「五平餅」を楽しんだ後、われわれは「妻籠宿」を後にした。道を折り返して駐車場に向かう途中、向こうから黒いウェアのヨーロピアンの女性が勢いよく歩いてきた。さっきの茶屋で見かけた女性だ。われわれは車でここに移動してきたが、彼女は歩いて、今「妻籠宿」に到着したばかりだ。傘を差さず身体と髪をぬらしながらも、前を向いてカツカツ歩く彼女の姿は、修行僧のようでかっこよかった。すれ違った後、「きっと有名モデルで、日本にお忍び旅行に来ているんでしょ」と同行者と勝手な想像を膨らませた。

 

 その後、「中津川駅」から17時頃の電車に乗って、19時30分頃には東京へ戻った。往路で「大湫宿」に到着した際は、ずいぶん遠くに来たものだと感じたが、帰りはあっけない感じだった。よい旅ができた時に感じる感覚だ。

スタンプラリー「中山道ウォーキング~東美濃編~」(アプリ)

 中山道ウォーキングを楽しむためには「名古屋鉄道」が運営するお出かけアプリ「CentX(セントエックス)」の利用を勧めたい。このアプリには「中山道ウォーキング~東美濃編~」というスタンプラリー機能があり、3のコースが提供されている。

スタンプラリー「中山道ウォーキング~東美濃編~」
「JR恵那駅」併設の物産館にある恵那市観光協会で踏破証明書をもらう。

17時30分までに到着しないと!?(自己責任で)

 各コースの指定されたチェックポイントを通過し、ゴールに到達すると、「踏破証明書」がもらえる。今回、私のスマートフォンとアプリの相性が合わなかったため、利用を断念したが、同行者はこのアプリを利用していて、チェックポイントで盛り上がっていた。我々は初日に歩いた「大湫宿」から「大井宿」間の踏破証明書をもらった。

スタンプラリー「中山道ウォーキング~東美濃編~」
ハガキサイズの挟めるものがあると保管したい。履歴書に書けば話が弾む?

 「大湫宿」から「妻籠宿」への中山道ウォーキングは、江戸時代への想いと現代の空想が融合しながらの旅だった。長い「中山道」を歩く間に、豊富な時間を利用して、急ぎ足での観光とは異なる、よく考える経験ができた。それから約4カ月後の今、江戸時代ではなく、自分が歩いた「中山道」の記憶に思いを馳せている。

 

【旅レポ (前半) 】岐阜・中山道ウォーキング体験記-13.7kmの十三峠を余裕で制覇?(記事へ

 

取材協力:岐阜県、東美濃歴史街道協議会

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