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【独自取材】羽田空港 白タク蔓延|はざまにはライドシェア広報戦略?

2024年3月某日の朝、新宿バスタから羽田空港へと向かった。目的は、大手メディアが一斉に報じた白タクの実態を知ることだ。よい旅ニュース通信は昨年12月、羽田空港で複数の外資系OTAが斡旋する白タク問題について記事にしていた。(写真:登場人物とは関係ありません/羽田空港第3ターミナル1階)

羽田空港第3ターミナルの白タク行為が行われるエリア
※タイトル更新:「現実と空想のはざまに見えたこと」→「はざまにはライドシェア広報戦略?」(4/1)

 

3月12日のテレ朝YouTubeチャンネルで、今年2月8日に羽田空港で白タク行為をした中国籍の男が、3月11日に自宅で逮捕されたことを知った。男には無許可で観光客5人を箱根から羽田空港まで4万円で送迎した容疑がある。また、男は月収60万円で、昨年7月から480万円を稼いでいたと報じられていた。

 

空港での白タク行為直後とみられる捜査員と容疑者のやりとりにおける車の逃走劇と逮捕の現場の様子は、民法全局で報じられていたことが各局YouTubeチャンネルの動画配信で確認できる。NHKではこの容疑者の逮捕についての報道は確認できていない。

 

よい旅ニュース通信は、2023年12月、ブッキングドットコムなどの外資系OTAが羽田空港での白タク配車に関与している疑いを記事にした。この問題に対しては、自民党の議員が観光庁に働きかけを行い、観光庁は12月に外資系OTAへ白タク配車サービスを紹介しないよう要請したとされる。自民党の武井議員のXでのポストを紹介する。

 

自民党の武井議員が大手OTAの白タク斡旋を問題視。観光庁との連携について自身のXにポストした(交通運輸専門に詳しい旅行サイト「Tricy」の独自記事が発端)

 

テレビ東京のWBSが白タク問題を取り上げる中、自民党議員が出演し、海外旅行サイトが旅行業法の縛りを受けない問題を指摘した。

 

なお、白タク行為の防止策としては、「2019年頃から、コロナ禍を挟み、国交省と警視庁が協力して、全国の主要な空港で訪日外国人旅行者に向けて啓発チラシを配布するなどの啓発キャンペーンを定期的に実施している」(国交省自動車局)とのこと。最近では、昨年12月に成田空港で、中国の春節に合わせて今年2月8日に羽田空港第3ターミナルにおいて啓発活動が行われた。

 

今回のテレビ各局の報道によれば、白タク行為は依然として続いていて、中国系SNS上で斡旋されている。1カ月前の2月中旬には、羽田空港で白タク行為をしていた日本人と中国人の男女5人が逮捕されたことも報じられていた。逮捕者の2人は12月に問題視された外資系OTAのブッキングドットコム経由で、3人が中国の配車アプリ経由で白タクが斡旋された。

 

白タク斡旋ルートは大きく2系統ある。一つ目は、ブッキングドットコムなどの外資系OTAで、日本の旅行業法に縛られない部分があるが、日本支社で営業する企業としての社会責任が求められ、観光庁との関係性もある。二つ目は、中国のSNSや配車アプリで、実態が不透明であり、違法行為が行われている。

羽田空港 第3ターミナルへ

新宿バスタを出発し、お昼前、第2ターミナルに到着した。歩いていた空港スタッフに「例の白タクはどちらに停車しているか?」と聞いた。「このターミナルでは見かけない。第3ターミナルに多いらしい」と言う。いつもの習慣で第2ターミナルに来てしまった。中国人が白タクに関わっているなら、確かに国際線かと納得しつつ、第3ターミナルへ移動した。いよいよ決戦?と気分が高まったところ、まずタリーズで一息つく。その後、警備員に聞くと「白タクは1階の交番から向こう側で見かける」と言う。交番の向こう?交番の近くで白タク行為が行われているのか…

 

ターミナル1階中央エリアから歩いてゆくと交番があった。ググると「東京空港警察署第3ターミナル交番」という名称だ。交番内には警察官が1人いた。取材で来たと伝えた上で、「交番から向こう側で白タクの目撃情報がある」と伝えると、「あぁ、担当していないけれど、本庁が取り締まりに来る」と言う。「月に1回とか?」と聞くと、「そうなぁ」とほほ笑む。

 

事情を察し、交番を出ると、3人組の若手警察官が歩いてきた。同じように聞くと、やはり「担当ではないけれど、あちらの方で見かけるらしい」と言う。空港交番の近くで白タク行為が行われる中、担当外という返事に、少々不思議な印象を持ったが、縦割りの構造は役所も同じだと納得もする。逆に検挙という大きい問題が関わっているならば、なおさら権限は厳密化されるだろう。

 

その後、清掃員とリムジンバススタッフからも「白タクなら向こうに多い」と聞く。普通のタクシー運転手は「白タクだらけ」と言う。全員、白タクはここでは当たり前というような口ぶりだった。

白タクゾーンへ

想像していた以上にアルファードやそれ風な車両も多い。停車中の車両ナンバーの色は白と事業用の緑が同じくらいだ。白タク車両は、アルファードとされるが、従来から緑ナンバーは見かけるし、当然自家用として利用されている。停車中の白ナンバーのアルファードの運転席は、いずれも男1人でスマホを見つめている。

 

それは、当たり前の姿だが、きっとアプリで客とやりとりをしているに違いないと思い込む。であれば、「乗せてくださらないか」と声をかけてみよう。歩道側の助手席の窓から運転手にナイスのジェスチャーを送るとともに1本指を示し、「1人いける?」というメッセージを送る。相手が首を横に振る。次に窓を下げてもらい、「ヨヤクナイケド ノレル?」と伝えるが、やはり首を横にふる。ここで、「ダレカヨヤクアルカ?」と聞くと、首を縦に振る。相手は、日本語はあまり話せないようだ。ここで、自身がなぜかカタコトの日本語で話しかけていたことに気く。その車はその場を去った。不自然なやりとりだったので、確率的に80~90%は白タクかなと思いつつ、その後10分ほどで、同じことを2度繰り返した。運転手に質問した後、その場を離れた車両は最初の1台のみだった。

 

その後、1人の男が、携帯を手にいったりきたりしているのを見かける。アルファードを停車しているようだ。白タク運転手と思い、電話を終えた際、「ヒトリノレル?」と聞く。男はけげんな顔で見つめ返してくる。不穏な雰囲気になったので、「スミマセン、シロタクシュザイデ…」と伝えると、「テレビのこと?」と聞き返してきた。日本語は問題なさそうだ。話をつなごうと、今度は普通の日本語で「半年で400万以上売り上げた人が逮捕されました」と話すと、「〇〇さん」と敬称で容疑者の名前を口にした。

 

知り合いなのか聞くと、「知らない、知らない」と言い、「会社をやっていて、私の400万は月収」とアピールされた。失礼な質問をしたことを、謝罪をすると、「私はどれが白タクか分かる」(~その特徴を聞く~)、最後に「でもほとんど日本語は話さないよ」と教えてくれた。その直後、男は到着ロビーから下りてきた女性を車に乗せて空港を去った。月収400万円?男はいったいどのような人物なのか。

 

その後、男から聞いた白タクの特徴と停車車両を照らしわせると、約10台中2台が白タクである可能性があった。今回、白タク行為が活発である状況を確認できたと考えている。また、交番の近くで頻繁に白タク行為が行われている一方で、本庁が取り締まりを担当しているため、日常的な捜査や摘発は行われていないことを知った。

 

大手メディア記者と警察

今回の取材の契機になったテレビ報道では、捜査員が運転席の容疑者を説得する様子と、その車が急発進して逃げ去る場面、そして別の日に容疑者が自宅から連行される光景が報じられた。警察が火災や強盗といった事件や、何らかの社会的なテーマを持つ事案に対処する際、警察記者クラブに加盟する大手メディアが現場に同行することがある。それは、1社だけの場合もあれば、複数社の場合もあり、瞬発的な発信力を持つテレビが重宝される。大手新聞社では、捜査関係者によるとという言葉が記事に盛り込まれるが、各社の取材力によって取材情報に差が生まれ、それぞれのメディアの特徴が反映された論調が記事に表される。

 

大手メディアの記者は新卒から長い地方支局時代、夜討ち朝駆けと呼ばれる、察まわり(警察関係者への取材)を経験する。記者としての基礎力能力は、若手時代の警察との関係を通じて培われ、その経験が仕事の基礎となっていると言っても過言ではないだろう。自身は長年にわたり広報の仕事に携わるため、大手メディア記者との接点がある。何度か記者に新人時代の警察との関係について尋ねたが、彼らは大変だったと説明するが、詳しい話はしてくれなかった。

 

白タク取締りとライドシェア解禁

少々脱線したが、話を戻そう。確かに白タク行為の問題は社会的テーマだ。一方、警察は白タクの状況を把握しているが、その摘発は限定的という印象だ。では、今回のテレビ報道を通じて、白タク行為をした容疑者の逮捕の様子が報じられたことは、白タクの抑止力になっているのだろうか?今回の取材を通じて、テレビ報道後でも、羽田空港において白タク行為は盛んに行われているという印象を受けた。

 

新宿に向かうバスの車内で、テレ朝のモーニングショー解説者、玉川徹氏が番組内で白タク行為を行った容疑者の逮捕とライドシェアとの関係について言及したことを、毎日新聞と系列のスポニチが報じたネット記事を見た。ライドシェアに関して、玉川氏が番組出に演していた時と同じく、羽田空港へ向かうバスの車内で、同じことを考えていた。
これまで国や経済界は、「ライドシェア解禁によって、不法な白タクは根絶できる」と説明している。それを考えれば、今回の白タク報道とライドシェアの関係は今気づくようなことでもない。

※全国紙である毎日新聞が番組コメンテーターの発言、しかも他系列番組内の発言をニュース記事として取り上げることは非常に珍しい。なお、系列の朝日新聞を含めて他の新聞社はこの件を報道していない。

 

3月12日~13日にかけての白タク容疑者の逮捕報道後、SNS「X」では「白タクを取り締まれ」や「ライドシェアを認めるべき」という投稿がいっきに拡散された。それを待ち、3月13日~14日には、大手メディア各社が、国交省が4つの都道府県の一部地域でにおけるライドシェアサービスを認可したことが一斉に報じられた。

 

もし、自身がライドシェアの広報を任されていたら、どのような戦略を展開していただろうか。今回、そのお手本が示されていたようだ。

 

この記事を執筆する際、再び白タク容疑者の報道を視聴した。その容疑者の顔を見た瞬間、息を呑んだ。最近、彼と出会った気がした…。

 

※この記事は実際の現場取材や関係機関への取材に基づいていますが、記事の文末の一部は創作です。

 

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