会計検査院が公表した「令和5年度決算検査報告」により、新型コロナ対策として運用された厚生労働省の「医療機関情報支援システム(G-MIS)」事業に関連し、「電通グループ」の100%子会社「電通テック」(現:電通プロモーションプラス)による約1憶1千万円の過大請求が明らかになりました。
令和5年度決算検査報告は2024年11月6日に会計検査院から石破総理に提出され、会計検査院の公式サイトでも公開されました(会計検査院の担当者)。しかし、約2カ月後の2025年1月20日に突如、朝日新聞により電通テックの過大請求が報じられました。その後、中日新聞も報じました。一方で朝日新聞および中日新聞の報道は昨年11月の公開当時の情報と特段の変化はありませんでした。よい旅ニュース通信ではこれらと異なる背景を説明します。 |
電通テックが受託したG-MIS事業は、医療機関の稼働状況や病床情報を一元化し、自治体と共有するために構築されたシステムです。電通テックは2020年5月、厚労省から随意契約でコールセンター業務を受託した上で、「電通カスタマーアクセスセンター」(現・電通プロモーションエグゼ)に再委し、さらに再々委託が行われ、電通グループならではの中抜き構造が構築されました。なお、再々委託においては、厚労省への報告義務が果たされませんでした。
この事業プロセスにおいて、実態のない人数分の人件費が含まれた請求が行われていました。また、ライセンス調達費として計上された約1万3000件分の費用も、実際には購入されていないことが判明しています。
また、厚労省は電通テックから提出された請求書の内容を十分に確認しないまま支払いを実施。その結果、本来の支払額である約7億5000万円を大幅に超え、約8億6000万円以上が支払われ、差額の約1億1000万円が過大な支払いとなりました。
電通グループを巡っては、2020年には、持続化給付金事業において電通の主導で設立された「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」が元請けとなり、その後、電通グループ企業や人材派遣大手「パソナ」ほか約500社もの下請け企業が関与する中抜き構造が指摘。2023年には北海道庁の新型コロナ関連業務において、「電通北海道」と今回も登場した電通プロモーションエグゼが約1億6000万円の過大請求を行っていたことが発覚しています。
電通グループは、過去の不正請求や東京五輪の談合事件を受け、2023年3月に「コーポレートガバナンスポリシー」を策定し、企業取引に関する新たな調達ガイドラインを公開していましたが、今回、2020年時の不適切な取引が明るみに出ました。
よい旅ニュース通信編集部は2025年1月20日、電通グループ広報部担当者に対し、グループ企業内で同様の不正事件が今後発生する可能性などについて質問するメールを送信しました。今後、回答があればご紹介します。