観光庁の訪日観光補助金、5事業者の6事業に4048万円を過大交付 同庁性善説と説明

会計検査院が2026年11月5日(木)に公表した令和7年度決算検査報告で、旅行大手JTBが事務局を務める観光庁の「訪日外国人旅行者周遊促進事業費補助金」について、5事業主体の計6事業に、計4048万3000円が過大に交付されていたことが分かった。
同院による検査では、事業者の契約先からの返金や、未購入品の計上、虚偽の領収書の添付などがあり、JTBの審査や観光庁の監督の不足も指摘された。
| 会計検査院 令和7年度決算検査報告「不当事項」 |
対象は、2022年度の「地域の稼げる看板商品事業」5事業(全1327事業)と、2023年度の「観光コンテンツ造成支援事業」1事業(全1406事業)。地域の観光資源を生かした体験コンテンツの造成や販路開拓などを支援するもので、観光庁の公募で選ばれたJTB霞が関事業部が事務局を担当。国から補助金の交付を受け、各事業主体への補助金交付や実績報告書の審査を担っていた。
対象6事業への交付額は計5443万3000円で、このうち約74%に当たる4048万3000円が不当と認められた。事業主体別の過大交付額は次の通り。
- にし阿波ネイチャーツアー実行委員会 (徳島県三好市) 600万円
- 土佐御苑(高知県高知市)993万3000円
- 集落活動センターあわ(高知県須崎市)1530万円
- 梼原町商工振興協同組合(高知県梼原町)325万円
- 金栗四三ランニングステーション協議会(熊本県熊本市)600万円
※会計検査院による各事業の検査は、複数年をかけて行っている。
返金などで補助要件を満たさず、全額対象外に
検査院によると、広告中堅の「JR西日本コミュニケーションズ」(大阪市)などが参加する「にし阿波ネイチャーツアー実行委員会」と、「金栗四三ランニングステーション協議会」は、契約先に代金を支払った後、返金を受けて自己負担分などに充てていた。検査院は実質的な値引きと判断した。
にし阿波ネイチャー実行委員会は、アウトドア体験コンテンツの開発などを「株式会社e-plan」(大阪市)に委託。補助対象事業費700万円で事業を完了したとする報告し、JTBの審査を経て600万円の補助金を受けていた。
しかし、e-planからの返金110万円を差し引くと、補助対象事業費は590万円となり、「700万円以上」の要件を満たさなくなる。このため、補助金600万円が全額対象外となった。
金栗四三ランニングステーション協議会も、返金を控除すると補助対象事業費が700万円を下回り、補助金600万円全額が対象外となった。
「株式会社土佐御苑」では、委託先から借りた資金を委託代金などの支払いに充て、その一部を返済していなかった。購入したと報告した物品も未購入だった。これらの金額を除くと補助対象事業費が700万円を下回り、補助金993万3000円全額が対象外となった。
「梼原町商工振興協同組合」の2022年度事業でも、委託先からの借入金の一部未返済が実質的な値引きと認定され、325万円の過大交付となった。
虚偽の領収書を添付 2事業で1530万円の過大交付
「集落活動センターあわ」では、2022・2023年度の2事業で計1530万円の過大交付が認められた。
2022年度事業では、委託先に契約額1650万円を期間内に支払ったとする実績報告書に、虚偽の領収書を添付していた。実際には期限までに支払っておらず、補助要件を満たさないため、補助金1000万円全額が対象外となった。
2023年度事業では、委託先からの借入金の一部を返済しておらず、実質的な値引きと認定された。補助額を計算し直すと、530万円の過大交付となった。
JTBの審査、観光庁の監督が不十分
検査院は、5事業主体に補助事業の適正な実施に対する認識が著しく欠けていたと指摘。JTBは事業主体への指導と実績報告書の審査、観光庁はJTBへの指導監督が不十分だったとした。
前年度の令和6年度決算検査報告でも、同じ補助金でJTBが事務局を務めた2事業主体・計4事業について、約1673万円の過大交付が指摘されている。対象は今回と同じ2022年度・2023年度で、契約先からの返金や借入金の一部未返済などが確認されていた。
関係者への取材 観光庁は「性善説」と説明
令和7年度決算検査報告を受け、よい旅ニュース通信では11月6日午前、会計検査院のほか、事業管理者の観光庁、事務局のJTBに取材を行なった。
会計検査院の検査担当者は、よい旅ニュース通信の取材に対し、過大交付分の返還について、観光庁から事務局のJTBを通じて、補助金の一部または全額の返還が決められると説明した。
多数の補助事業者から今回の5事業主体・6事業を見つけた検査方法については、具体的な説明を控えつつ、事前に着目する対象を絞って検査しているとした。
観光庁に対し、検査院がJTBの審査や同庁の指導監督も不十分だったと指摘した点について見解を求めたところ、同庁は、「今回は事業主体側の問題であり、事務局が提出書類の虚偽を見抜くことは難しい。そこには性善説がある」と説明。
JTBは、よい旅ニュース通信の取材に対し、「観光庁と緊密に連携して対象事業を精査し、交付した補助金の一部または全額の返還を求めることになる」と説明した。また、「国の補助事業である限りは、今回の件を今後の事業遂行において生かしていかなければならない」と述べた。